『小学館文庫 ビューティフル』第1巻
さいとうちほ 小学館 \743+税
1986年4月26日、ウクライナ(旧ソビエト連邦ウクライナ共和国)のチェルノブイリ原子力発電所で原子力事故が発生。午前1時23分、チェルノブイリ原子力発電所の4号炉が爆発し、数多くの死傷者を出した。
この事故での犠牲者を追悼するため、今日は「リメンバー・チェルノブイリ・デー」とされている。
チェルノブイリ出身の天才バレエ・ダンサーを主人公とするのが、さいとうちほ『ビューティフル』だ。
主人公の悠里はロシア人を父に、日本人を母に持つ。
妹を含めた一家4人はウクライナに暮らしていたが、チェルノブイリ原発事故により義父を失い、また放射能の後遺症により母をも失う。
成長した悠里はモスクワのボリショイ・バレエ学校に進み将来を嘱望されるが、その出自から周囲からは白眼視され、自身も後遺症のせいなのか刹那的だ。
美形でスタイルがよくて、フィジカルもバッチリで、それでどこか影があるわけでしょう? そらぁモテますわ。
悠里は最愛の妹・杏奈への思いを胸に秘めながらも、さまざまな女性と浮き名を流していく。
その女性遍歴のなかで、「ジゼル」や「ロミオとジュリエット」といった演目への解釈を深めていく点も本作の特徴。そのため、バレエの知識がなくても、悠里の表現する「ビューティフル」を体感できる。
<文・加山竜司>
『このマンガがすごい!』本誌や当サイトでのマンガ家インタビュー(オトコ編)を担当しています。
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