『辺獄のシュヴェスタ』第1巻
竹良実 小学館 \552+税
(2015年6月12日発売)
2013年に、彫金師たちの物語「地の底の天上」で、毎月発表される新人賞・スピリッツ賞を受賞した竹良実。
かたや正式な紙幣の原版制作者、かたやその贋作者、相反する立場にある2人の主人公が人生を賭ける姿は壮絶で、受賞作がウェブで無料公開されるや大きな反響を呼んだ。
その竹良実の初連載作品が、本作『辺獄のシュヴェスタ』。前評判を裏切らない力強いスタートを切った。
舞台は、魔女狩りの嵐が吹き荒れる16世紀の神聖ローマ帝国。
貧しい家に生まれ、人買いに売られた少女・エラは、そこを逃げ出し、薬草で人々を治療する女性・アンゲーリカのもとで暮らし始める。
だが、母と慕うアンゲーリカが魔女として告発され、エラも魔女の娘を集めた女子修道院に送り込まれる……。
魔女狩りや矯正施設といったテーマそのものに目新しさはないが、数々の加虐で心を破壊せんとする修道院で、それでも折れないエラの恐ろしいほどの強靱さが読者を呑みこむ。
魔女狩りを主導した修道会の総長・エーデルガルトに、復讐を決意したエラ。
聖女と魔女、対極に位置する2人の運命が交わり始めた。
<文・卯月鮎>
書評家・ゲームコラムニスト。週刊誌や専門誌で書評、ゲーム紹介記事を手掛ける。現在は「S-Fマガジン」でファンタジー評を連載中。
「The Differencee Engine」