日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『暗殺教室』
『暗殺教室』第16巻
松井優征 集英社 ¥400+税
(2015年10月3日発売)
泣いた。号泣した。
椚ヶ丘中学校の落ちこぼれ生徒ばかりが集められた特殊なクラス・3年E組と、その担任である不思議生物・殺せんせーの、命がけの教育的コミュニケーションを描いた異色の少年マンガである本作。
この16巻では、これまでほとんど謎に包まれてきた、殺せんせー誕生のきっかけがついに明かされる。
「死神」の名を持つ、最強の暗殺者。
ささいなきっかけで囚われの身となり、人体実験の材料となった彼は、軟禁生活のなかでひとりの女性と出会う。その名は雪村あぐり。
「死神」は、彼女との交流で、初めて人の優しさを知り、彼女もまた、「死神」と触れ合うことで、ひとときの安らぎを得る。
しかし、彼の身体が、人類を滅ぼしかねない、恐ろしい進化をとげていることが判明したとき、その幸せは、もろくも崩れ去るのだった……。
センセーショナルな設定や、殺せんせーのビジュアルが持つインパクトの強さで、本作のことを出オチ的なマンガだと誤解している人も多いのでは。
しかし、その根底にあるのは、圧倒的な人間讃歌の気持ちであり、人の「魂」に対する熱い思いだ。この「エピソード・ゼロ」にあたる物語からは、そんなことが、端的に伝わってくる。
単行本は頭から順番に読んでいくのがベスト。
しかし、もし、途中の巻まで手を出して、しばらく離れていたという人がいたら、思い切ってこの巻を手にとって見るのもよいかもしれない。
それくらい、殺せんせー誕生の前日譚は、単独で完成度の高いエピソードだ。
<文・後川永>
ライター。主な寄稿先に「月刊Newtype」(KADOKAWA)、「Febri」(一迅社)など。
Twitter:@atokawa_ei