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【インタビュー】伏線リストと分岐が書かれた秘密のノートがある!? 『僕だけがいない街』三部けい【後編】

2014/06/24


作家の数だけ、マンガの作り方がある。はたして三部けい先生は、どのような方法で作品を生み出しているのか。そして誰もが気になる「真犯人」にも迫る!

前編はコチラ!
師匠・荒木飛呂彦との関係は……? 『僕だけがいない街』三部けい【前編】

中編はコチラ!
いま考えているラストは変わるかもしれない……!?  『僕だけがいない街』三部けい【中編】

三部けい

北海道出身。

三部敬、瓦敬助名義でも活動。

代表作である『菜々子さん的な日常』シリーズをコアマガジン、小学館で執筆。

2014年に『僕だけがいない街』でマンガ大賞2014第2位を受賞。

現在は『僕だけはいない街』『STEAL AND DEAD』を連載中。

三部流「マンガの描き方」

三部 あの、これの中身は撮影はNGでお願いしたいんですが……。

――アイデアノートというか、ネタ帳のようなものですね!

これから先の『僕街』の秘密がつまった一冊!

これから先の『僕街』の秘密がつまった一冊!。

三部 連載を始めると、かならず1冊つくるんですよ。連載が長くなったものは、2冊目とかに突入してますが。

――メモや絵がすごくたくさん描かれてあって、切り貼りもしてます。あ、さまざまなデータ類も記載されてます。いや、すごく分厚いですね!

三部 出来事の年表とかも書いて、その都度描き直して更新したりしてます。当時のカレンダーとか、「この日は日曜日じゃん、現実と違う!」みたいなツッコミはされたくないので。それで……、あ、ここに「アイリとの別れ」って書いてますね。

――3巻ラストのシーンですね。ネタ帳であり、メモ帳であり、プロットも兼ねているわけですね。

三部 そうですね、この「アイリとの別れ」についても、以前にも同じものをメモに書いているんです。ただ、そのメモを書いたときとは、想定していた展開が全然違うものになったので、今このタイミングでもう一度出てきた。思いついたことは、とにかく書いて、メモのなかに「置いて」おくんです。そうしないと、忘れちゃいますからね。

第3巻のラストシーンより。絶望的な状況においても、アイリを気遣う悟のやさしさ!

第3巻のラストシーンより。絶望的な状況においても、アイリを気遣う悟のやさしさ!

――ほー、これは確かに物語が分岐してきた経緯がわかるというか……。

三部 ラストの案もじつはいっぱい入ってます。だから、あまり見ないほうがいいですよ(笑)。

――たとえばトラックの運転手の人影(#1【走馬燈 2006.05】)だったり、マルクマ駐車場でのふたつ結びの女の子の影(#4【誘拐未遂 2006.05】)とか、西園(#18【別れの時 2006.05】)の名前とか、読み返したときに「あっ!」となる箇所や伏線が多いです。あまり離れすぎてしまっても、読者が気づかない恐れがありますが、そういったものはどの段階で入れようと決めるんですか?

三部 ネームに入る直前に、このメモ帳にまずプロットを書きます。この段階で、今回やるべきこと、やらなくていいこと、そういったことを決めていきます。それから伏線リストもあるので、どの段階でどの伏線を入れるか、このネーム前の段階で決めてます。

担当 打ち合わせで話すのは、まず「コミックスでどこまで入れるか」。やること自体は決まっているので、それをどこで出すか。その順番を決めます。毎回の話自体については、「何をするか」と「どこで終わるか」を決めます。なので、ネームに入る前の打ち合わせ段階で伏線を含めた大体のことが決まります。基本的には1話30ページのマンガですけど、25ページで終わったほうがいいんじゃないかとか、32ページ使ったほうがいいんじゃないかとか、そういう話をします。

――そのあとにネームに入る、と。かなり手間をかけて作品づくりをしてますね。

三部 これがネームです。

――ほとんど本原稿に近いですね。

ネームの描きこみ具合は人それぞれだが、三部先生は下書きとしても使用できるレベルだ。

ネームの描きこみ具合は人それぞれだが、三部先生は下書きとしても使用できるレベルだ。

三部 そうですね、ネーム兼下書きのような感じです。

――では打ち合わせ段階で大筋が決まっているから、ネームではほとんど直しが入らないんですか?

三部 読み味の問題で、後ろのほうをバッサリ切ったこともありました。怖い感じの引きで終わるネームを描いたんですけど、「その前のここがラストでもいいんじゃない?」と言われて、それで後ろをカットしてオチを活かす……とか。このネーム段階では、「何がいちばん映えるか」を考えます。

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