日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!
今回紹介するのは、『のの湯』
『のの湯』第2巻
釣巻和(著) 久住昌之(案) 秋田書店 ¥600+税
(2016年5月6日発売)
『のの湯』の銭湯大好き女子・野乃は浅草で人力車の車夫をしている。
入居する部屋を探していると、風呂なしトイレ台所共同で家賃4万、そして銭湯に入り放題の「湯毛荘」を見つけ入居することに。
同居人で管理人の孫・岫子(くきこ)、カリフォルニアからの留学生のアリッサと共同生活を送る。
浅草の天然温泉「蛇骨湯」に始まり、北千住の「大黒湯」、上野の「六龍鉱泉」「寿湯」、麻布十番「竹の湯」。
第2巻では小旅行気分が味わえる鎌倉の「清水湯」、リニューアルによってスタイリッシュに変化した桜台の「久松湯」などが描かれる。
もちろん行って実際に入れるところばかり。
でっかいお風呂は好きですか?
「同性とはいえ人前で裸になるなんて」と躊躇(ちゅうちょ)する人がいることは百も承知。
苦手意識が強い人はこういう考え方はどうだろう。
“銭湯や温泉は、お酒やお茶みたいなものである”
蛇骨湯はメタけい酸と重炭酸ソーダの古い角質を落とし肌を整える作用のある美肌の湯。
こじんまりとした清水湯なら、この夏は湯あがりに海風を浴びるのも心地よいに違いない。
竹の湯なら美肌効果に加え清涼感あるお湯。
お酒やお茶も「いつもの」があっても、その日の気分によってはまろやかな舌触り、目もさえるキリッとした味を、とにかく気軽に口にできるものを……と求めるものは違う。
同じように、気持ちに合わせてお湯を楽しむのも楽しいものですよ、と。
女性の場合、それまでお互いのスッピンを見せたことがない人は湯あがりに「化粧して出たほうがいいかな」「もう、いいんじゃない?」という会話をしたことがある人もいるはず。
いっしょに湯につかる前と後とでは関係性が変わる経験。
『のの湯』の3人は、エピソードごとにそれを積み重ねている。
<文・川俣綾加>
フリーライター、福岡出身。
デザイン・マンガ・アニメ関連の紙媒体・ウェブや、「マンガナイト」などで活動中。
著書に『ビジュアルとキャッチで魅せるPOPの見本帳』、写真集『小雪の怒ってなどいない!!』(岡田モフリシャス名義)。
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