365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。
8月11日は山の日。本日読むべきマンガは……。
『山と食欲と私』第1巻
信濃川日出雄 新潮社 ¥520+税
本日2016年8月11日は、「山の日」が祝日として初めて施行された記念すべき日。
制定そのものは2014年のことで、日本山岳会など関係団体の呼びかけによって設立がスタート。
「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを趣旨とし、お盆休みとも連結させやすいこと、そして「八」が山の形に、「11」が山の木々に見立てられることなども意図して、8月11日が山の日に決定した……とのこと。
本年は初の「山の日」ということで、とりわけ各地で力の入ったイベントも開催されるようなので、アウトドア派の人はぜひそちらにも注目していただきたい。
そしてインドア派の人に向けても、本日は当然のように山に関連した作品を紹介!
……とはいえ、たしかに登山をテーマとしたマンガには『岳』や『神々の山嶺』といった名作がそろってはいるものの、どちらかといえば山の厳しさが全面に押しだされている作品が多く、初心者が「山に親しむ」というきっかけとしては、むしろ「こんな命がけのところ行きたくないよ!」と逆効果にもなりかねない。
なので、もう少し山の楽しさを感じられる作品を……という趣旨なら、真っ先に思いつくのは『ヤマノススメ』かな? とも思いますが、よりダイレクトに「これなら山登りしてみたい!」とインドア派の人にも届きそうな『山と食欲と私』を本日はピックアップ。
本作の主人公は、妙齢のOL・日々野鮎美さん。「山ガール」と呼ばれることを好まず、自ら「単独登山女子」を名乗る、いろんな意味で若干こじらせてる女子である。
その「おひとりさま」の貫きっぷりからして同意したいところも多々あるのだが、彼女が山に登る最大の目的が「山でおいしく食事をする」というのも、非常に共感したいポイントだ。
おにぎりにはじまり、プチ贅沢なウインナーをトッピングしたインスタント麺やはんごうで作るオイルサーディン丼など、そのどれもがうまそうなこと!
おそらく自室で食べたらどうってことはなさそうなものばかりなのだが、それに「山」という要素が加わると、とたんにうらやむばかりの極上の食事に見えてくるミラクル。
そして、作中でも近くにいる男子学生たちにうらやましがられたりはするのだが、彼らと直接的に交流することはまったくないまま、「うまそうなもの食ってる」という愉悦と優越感のみで終わるのがすがすがしい。
この「めんどくさくない感じ」も、とってもいいんです!!
というワケで、個人的にはバーベキューなどを見ても「なんでわざわざ外で食事するのか意味がわからない」とすら思っていたクチなのですが、それでも彼女の食べっぷりには心動かされまくり。
食事に特化したアウトドア用品の魅力も含めて「これはちょっといいかも……」と思えてきたので、すでに山の楽しさを知っている人だけでなく、超絶インドア派の諸氏にもぜひ読んでいただきたい。
もしかしたら、人生に新たな扉が開くかもしれませんよ?
<文・大黒秀一>
主に「東映ヒーローMAX」などで特撮・エンタメ周辺記事を執筆中。過剰で過激な作風を好み、「大人の鑑賞に耐えうる」という言葉と観点を何よりも憎む。