365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

11月8日はいい歯の日。本日読むべきマンガは……。

『ゲームセンターあらし』 第1巻
すがやみつる 太田出版 ￥1,900+税

11月8日は「いい歯の日」。
「11・8（いい歯）」の語呂合わせで、歯のケアに気をつけることで、健康寿命を延ばそうと啓蒙するため日本歯科医師会によって1993年に制定された。

そんな「いい歯の日」にふさわしいマンガといえば、『ゲームセンターあらし』をおいてほかにない！

『ゲームセンターあらし』は「コロコロコミック」誌上で連載された大ヒット作。ビデオゲームをテーマに取り上げたおそらく初の少年マンガでもある。

あらしといえば出っ歯がトレードマーク。
この出っ歯、じつは編集者から「もっとカッコ悪い主人公にしましょう」いわれて考えられた重要なキービジュアル。
二枚目の主人公では読者に対するひっかかりが少ないというのがその理由だった。

出っ歯にそばかすにブタっ鼻という、決してカッコよくないあらしが華麗にゲームをクリアし、大人をゲームでやりこめる。そんな姿が小学生読者からの支持を得て、大人気へとつながっていった。

二枚目すぎないあらしの主人公像は、のむらしんぼのバトル受験マンガ『とどろけ！ 一番』のキャラクターデザインにも強い影響を与えている。
また、あらしのインベーダーキャップのように、イケメンすぎない顔＋特徴的な1アイテムというデザインは、このあとの「コロコロ」作品の主流となっていく。

『ゲームセンターあらし』のあらしのインベーダーキャップ、『とどろけ！ 一番』（のむらしんぼ）の一番のハチマキ、『ラジコンボーイ』（大林かおる）の車剛のヘッドセット、『ゼロヨンQ太』（池田淳一）のQ太のバンダナ、『プラコン大作』（たかや健二）の大作のベレー帽、『ダッシュ！ 四駆郎』（徳田ザウルス）の四駆郎の羽根付きヘアバンド。
『あらし』はコロコロ発のヒーローのベースともなった偉大な作品なのだ。

あらしの出っ歯は超頑丈で、腕が使えない時にボタンを出っ歯で叩いたりするのはもちろん、なんと、抜けた出っ歯を脳波（？）でリモートコントロールする人間離れした技も披露したことがある。
さらには、ひどい虫歯に悩まされたあらしが歯医者さんにかけこんだ時も、ほかの歯は虫歯でボロボロなのに、出っ歯だけは無傷だった。

アニメ版『ゲームセンターあらし』の主題歌には「巨大な出っ歯がピカッと光りゃ」のフレーズが歌いこまれていたが、出っ歯が主人公のキャラクターアイコンになっているなんて（きっと）あらしだけ！
「真っ赤なタイツ」が主題歌の歌詞に入っている特撮作品『バトルホーク』（永井豪・作 石川賢・画）に並ぶ変わりダネアイコンだといえる。

そもそもあらしの出っ歯は母親譲り。後に生まれる弟・とんがらしも、立派な出っ歯を持っている。
そして母ちゃんは「ノーブラボイン撃ち」を必殺技にするインベーダーウーマンとなってあらしの前に立ちはだかり、とんがらしも兄に負けない天才ゲーマーっぷりを発揮した。
出っ歯は天才的なゲーマーの血筋を示すアイコンでもあったのだ！

「いい歯の日」に、あらしの「出っ歯」に注目して『ゲームセンターあらし』を読もう!!

＜文・秋山哲茂＞
フリーの編集・ライター。怪獣とマンガとSF好き。主な著書に『ウルトラ博物館』、『ドラえもん深読みガイド』（小学館）、『藤子・F・不二雄キャラクターズ Fグッズ大行進！』（徳間書店）など。構成を担当した『てんとう虫コミックスアニメ版 映画ドラえもん　新・のび太の日本誕生』が発売中。4コマ雑誌を読みながら風呂につかるのが喜びのチャンピオン紳士（見習い）。