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『別式』 第1巻 TAGRO 【日刊マンガガイド】

2017/01/14


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『別式』


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『別式』 第1巻
TAGRO 講談社 ¥570+税
(2016年12月22日発売)


「別式」とは、江戸時代の諸藩にいた女性武芸指南役のこと。
黒髪ポニーテールの佐々木類(るい)は、真っ正直で生まじめな武芸者。
門下生は数多く、一度も負けたことのない凄腕だ。

じつは「強い男」に組み伏せられる妄想で興奮し、春画を見ながらひとりでイタしまくっちゃうムッツリスケベな類。
前半は、脳天気で明るくだれとでも仲よくなれる島原藩の別式・中瀬古早和(なかせこ・さな)、古河藩の別式女筆頭で類と互角の力を持つ純情乙女・成田魁(かい)、野性的で切符のいい渡世人の切鵺(りや)の4人の、ドタバタお江戸生活が描かれる。
矢場(楊弓で遊ぶ場所)で酒を酌みかわしながら合コンをしたり、海上に自主制作草子を持ち寄って即売会を行ったりと、とっても楽しそうだ。

ところが後半、話は一気にシリアスになる。
島原の乱が起きたことで、早和の父親は討伐軍に参加し、死亡。
早和は「帰って残った家族を助けないと」「別式女もお役御免されてきちゃったっす」と笑う。
残された3人は、ただ泣くしかない。

ギャグとシリアスの振り幅がものすごく大きい。2回目に読むと様々なところでぎょっとなる。
まずオープニングのシーン。類と切鵺が刀を持って向きあっている。未来の話のようだが……。
類や早和たちは、町で多くの人を切り捨てて殺している。
それ自体はギャグ。だが早和の事件があった後にみると、彼女たちは人斬りが許される、バックがついている権限と責任のある武士なのに気づかされる。

突拍子もないネタが挟まれるものの、かなりガチな時代劇なのは間違いない。
何が飛び出すかわからない、貪欲にネタを詰めこんだ展開に期待してしまう。

TAGROファンなら、『変ゼミ』のあんなキャラやこんなキャラも登場しているので、要チェック。
ちなみに序盤に登場する変態武士のド畜生っぷりは、「さすがTAGRO先生!」と安心できます。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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