就活につまずいて、本気でマンガに向きあい始めた
――小学生の頃からキャラクターをつくり、世界観ができていき、軸になるキャラクターからストーリーが生まれていき……これをマンガにしたのはいつ頃ですか?
板垣 プロットを組み立てて、ちゃんとしたマンガとして描いたのは大学生の時です。同人誌をつくって売ったりしていました。
――それが、デビュー作の読み切りシリーズ『BEAST COMPLEX』の母体ですね。その時は、もう、漫画家になろうと決めていた?
『BEAST COMPLEX』
板垣巴留 秋田書店 ¥429+税
(2018年2月8日発売)
板垣 自分がちょっとずつ考えてきたマンガをいずれ編集さんに見てもらいたいと思ってはいたんですけど、厳しい世界なのはわかっていましたから、一回就職してから持ちこみを始めようと……。ところが、就活がことごとくダメで(笑)。命綱みたいな気持ちでやってるからうまくいかないんだと、就活をいったんやめる宣言をして、マンガを描きだしたんです。
――それで、「週刊少年チャンピオン」に持ちこみを?
板垣 はい、最初はダメダメでしたけど……編集さんが「何かあるかもしれない」と思ってくれて、修正点を伝えてくれました。間があいたら忘れられてしまうと思って、2週間後には、描き直しをだすようにしていました。
――どんな点をダメだしされていたんですか?
板垣 初めて出したマンガは、まるで主人公を描いてなかったんですね。世界をただカメラが追っていく、通りすがりの動物たちを写しとるみたいな感じで。「マンガには主人公が必要で、主人公が何のために動くのかが必要だ」と教えてもらって、なるほどと思いました。マンガの描き方をわかっていなさすぎでしたね。
――逆に評価されたのはどんなところでしたか?
板垣 独自性については何かしら評価をもらっていたような気がしますが、ダメだしのほうの印象が強くてあまり覚えてないです。絵も、もっとめちゃくちゃ下手だったんですけど、これはこれでいいよっていってくださって。
――『BEAST COMPLEX』の第1話を雑誌で見た時、絵柄のインパクトがすごく強かったんです。正直「好き」というより、まず「何これ? こんな絵見たことない」っていう驚きがあって……。
板垣 ずっとこの絵で描いてきたので、絵柄については独特と思っていなかったです。
――絵柄のうえで、影響を受けた人はいますか?
板垣 う〜ん、どうなんでしょうか。動物をキャラクター化するという意味ではディズニー映画ですが。美大の映像学科にいて、絵の勉強は座学程度なのですが、エゴン・シーレという画家にはハマりました。体を描く時、自分では似てると思うことがあります。
『エゴン・シーレ― ドローイング水彩画作品集』 新潮社
(2003年3月1日発売)
――ディズニー映画で好きな作品は?
板垣 『ライオン・キング』と『ダンボ』です。
――ちなみに『ズートピア』はご覧になりましたか?
板垣 公開されてから、間を置いて見ました。私が観て大丈夫かどうか、担当さんに確かめてもらってから……。なにしろものすごい組織がつくっているので、私がものすごい影響受けてしまったり精神的に落ちたりするかもしれないと思うと、不安すぎて。世界としては似ているし、テーマ性も似ていると思いますが「別物だな」と思って楽しめたのでホッとしました。
『BEASTARS』 第8巻
板垣巴留 秋田書店 ¥429+税
(2018年5月8日発売)
取材・構成:粟生こずえ
■次回予告
次回のインタビューでは、本作のキーワード"食欲と性愛"について語る!? 先生が作品にこめた想いとは……?
インタビュー第2弾は、7月5日(木)公開予定です! お楽しみに!