影響を受けた作品と 気になる次回作は……?
――田島先生は小さい頃はどんなマンガを読んでいたんですか?
田島 『ちびまる子ちゃん』です。あんまりマンガを買ってもらえなかったので、小さい頃は『ちびまる子ちゃん』くらいしか読んでなかったです。
――模写とかしました?
田島 マネして描きましたねー。
――では最初に描いたマンガは『ちびまる子ちゃん』?
田島 そうですね。オリジナルだと、小学校3年生の時に描いたヤツかな?
――それはどんなものでした?
田島 おじいちゃんがオナラで宇宙まで飛んでっちゃう……みたいな(笑)
――小学校3年生感あふれる内容ですね(笑)。今の田島先生の絵柄でシーンが浮かびます。
田島 それで小学校4年生とか5年生になると、お年玉の金額が増えてくるじゃないですか。それでマンガを買う量が増えました。
――では小学生の頃から漫画家になろうと思っていたんですね。
田島 ただ、中学生くらいからは理性が働いて「まぁムリだろうな」と思って(笑)
――それは理性が働くのが早かったですね。
田島 心の底では「まぁ、なれるかな」とは思っていたんですけどね。
――それで高校生からは映像方面に興味を持たれて?
田島 そうです。そんなにマンガは読んでなくて、まあ、本は読んでいたんですけど。
――『子供はわかってあげない』は、坂口安吾の短編『恋をしに行く』[注5]から着想したとおっしゃってましたよね。
田島 母方の祖父がいっぱい本を買ってくれたので、よく本は読んでいたんです。
――作中のサブタイトルや小ネタを見ると、かなり映画がお好きなようですが?
田島 それこそ大学時代はよく見ましたよ。
――お好きな映画は?
田島 最近のですと、『南極料理人』[注6]がおもしろかったです。内容は……、なんにも起こらないんです。南極という特殊な環境での日常を描いているというか、ラジオ体操してたりします。
――それはいつご覧になったんですか?
田島 連載が終了してからです。レンタルで60本くらい映画を借りてきて、そのなかの1本でした。
担当 本は? 最近は何か読みました?
田島 森見登美彦さん[注7]にハマりました。『四畳半神話大系』とか。
担当 好きそう。おもしろいですよね。
――影響を受けた漫画家とかいます?
田島 どなたかのところにアシスタントで入った経験もないので、あまりこれといってないんです。
――ではまったくの自己流なんですね。誰かに似ているようでいて、どこからも等距離にあるような印象を受けました。
担当 初投稿作の『ごあいさつ』が掲載された時は、高野文子さん[注8]に雰囲気が似ているかも、と言う人はいました。
田島 高野文子さんは好きでした。ですから、その話を伝え聞いた時に、「無意識に影響を受けてるのかなぁ」と思って、高野さんの作品をすべて友人にあげちゃいました(笑)
担当 もう「田島列島」という独自の立ち位置を確立したので大丈夫だと思い、先日、高野文子先生の新作をお渡ししました。
田島 やっぱりおもしろかったです。
――ちなみに次回作の構想とか、次に描きたいものとか、ありますか?
田島 ないです。
――あら、即答ですね。
田島 この間おみくじを引いたら、「商売」のところに「密かにすれば吉」とあったので言いません(笑)
――わかりました。次回作、気長に待たせていただきます(笑)
- 注5 『恋をしに行く』 1947年に発表された、坂口安吾の短編小説。『女体』の続編的な位置づけ。現在は青空文庫でも読むことができる。
- 注6 『南極料理人』 2009年公開の日本映画。原作は海上保安官出身の西村淳のエッセイ『面白南極料理人』。沖田修一監督の商業映画デビュー作で、本作で新藤兼人賞金賞などを受賞。堺雅人演じる南極観測隊員のひとりである西村淳が、南極大陸で越冬する隊員のため料理人として奮闘する姿を描く。
- 注7 森見登美彦 「モリミー」の愛称で親しまれる小説家。2003年に『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞し小説家デビュー。2006年には『夜は短し恋せよ乙女』で山本周五郎賞を受賞。代表作はほかに『四畳半神話大系』『有頂天家族』『ペンギン・ハイウェイ』など。独特の文体と世界観は森見ワールドとして多くのファンを魅了する。
- 注8 高野文子 『るきさん』などで知られる女性漫画家。寡作として有名で、2003年には『黄色い本』で手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞するが、これが8年ぶりの単行本だった。最新作の『ドミトリーともきんす』は「このマンガがすごい!2015」本誌のオンナ編の第9位にランクインした。
取材・構成:加山竜司