連載が進むにつれてどんどん弘光びいきに……
――映画を見て、役者さんたちが原作ファンを裏切らない役の作り込み方をされているように感じました。
幸田 みなさん、マンガから出てきたような完成度でした。先日、利太役の山﨑賢人さんと対談する機会があったんですが、利太をホントによく理解していて、驚かされました。「利太のことが好きな女の子は、どうやって落とせばいいと思いますか?」と質問したら、「答えをこっちが決めてあげればいいんじゃないですか?」という答えが返ってきて。言われてみれば、その通りなんですよね。山﨑さん、すごいな、わかってるなぁと。私がぼんやりとしか思ってなかったことをちゃんと言語化できるんですから。
――演じる方は、深いところまでキャラクターの性格をわかっているんですね。
幸田 それから、弘光役の坂口健太郎さんが「弘光の弱点はここだと思う」と語っていたのにも……。だって、作者の私が今なお、苦しんでやっと見つけた答えをサラッと見つけているんですから。その敗北感ときたら……(笑)。
編集 9月1日に発売された「別冊マーガレットsister秋フェス01号」に載っている『ヒロイン失格』の番外編は、弘光が主人公なんです。
幸田 連載中は弘光のいいところばかり見ていて……。今回、主人公として描かなくちゃならないから、いよいよ弘光の欠点ともちゃんと向きあわなきゃならなくなって。ずいぶん苦しみました。
編集 幸田さんは弘光が好きすぎて、欠点を直視したくなかったんですよね。
幸田 弘光には欠点も弱点もない、くらいに思ってましたから(笑)。
――利太にはモデルがいるそうですが、どんな人ですか?
幸田 私の幼なじみなんです。1巻あたりは、ほぼフィクションです。
――えっ、つまり、はとり=幸田先生?
幸田 そうです。私そのものです。私は幼なじみの彼のことがずーっと大好きで、でもふられまくりで。マンガとは違って最終的に彼女になれなかったし、私の前に弘光みたいな子が現れるわけでもなかったんですが。
――弘光にもモデルがいるんですか?
幸田 いるんですけど、それは単なるチャラ男で。あそこまでいい男じゃないですよ。弘光から誠実さを取ったような。でも、チャラ男ってマメで頭がいいんですね。これをすごくカッコよく描いたらおもしろいかなと思って。モデルの男友だちをめっちゃ盛っていい男に仕立てたら、本人いわく「オレのこと超わかってる、こわいわ〜」って。いや、そう思うあんたがこわいって思いましたよ。それにしても弘光って最初のころは、キツい感じでこわかったですよね。
――話が進むにつれて、弘光がどんどんカッコよくみえてくる。そこは映画も、原作マンガと同様でしたね。
幸田 もともとは利太が好きで描いてたのに、描いてるうちにどんどん弘光が好きになっちゃって。利太が安達さんを好きになったりして、読者にも嫌われていくんですよ。私はやっぱり読者さんが喜んでキャーッて言ってくれるキャラが好きなので……弘光の株が上がり始めてからは私もどんどん弘光派になって、最後まで弘光びいきでしたね(笑)。
――えっ、そんな! 先生はどっちがタイプですか?
幸田 弘光です!
――即答ですね(笑)。まあ、フラれ方までもカッコいいですからね。つくづくおいしいところを持っていくというか。
幸田 あそこは最終回よりも力が入ってるかもしれません。
――フラれて読者に愛されるって、最高の当て馬ですよね。
幸田 最高の散り様をこの人に与えたいと思って。映画版の坂口さんの散り方がまた最高で、すごくうれしかったです。