監督、俳優、スタッフさんたちのこだわりに大感激
――幸田先生は、はとりの髪型などにもこだわりがあるように感じます。映画も、日常生活の細かい部分まで、原作そのままにしっかり作り込まれていましたね。
幸田 小道具ひとつまで、全部かわいいんですよね。はとりのお部屋もめちゃくちゃ素敵だったし、服も髪型も! 原作でもはとりはしょっちゅう髪型を変えていますが、まさかここまでやってくれるとは! 花火大会のシーンの、浴衣とあわせた髪飾りもしっかり再現してくれて。
――映画に登場するはとりの髪型は、なんと44種類のアレンジがあったそうですね。
幸田 こんな髪型だったらかわいい〜、みたいに絵で描くぶんには簡単じゃないですか。ヘアメイクさん、けっこう苦労したそうです!
――制服のシーンが多いので、髪型がコロコロ変わるのが楽しいんですよね。
幸田 利太が制服にパーカー合わせてるところとか、ピアスも原作どおりで。利太のピアスは、当初はナシでいく予定だったらしいんですが、山﨑さんがじきじきに「利太はピアスつけてないと」と、ご自分でフープピアスを買ってきてくれたそうなんです。
――俳優さんにもスタッフさんにも、ホントにキャラクターが愛されてますね。
幸田 撮影を見にいったとき、学食にみんながいる場面を撮っていたんですが、「あ、はとりだ、中島だ、利太だ、弘光もいる」って感動しちゃいました。みんなのしゃべり出すタイミングとか、笑い方がホントにイメージ通りで。
――映画で、特にお気に入りのシーンは?
幸田 ときめき度で言うと、利太(山﨑賢人)が泣くシーン。そのあと、雨のなか、弘光(坂口健太郎)が来るところ。この2つがキャーッとなった2大シーンですね。あと、はとりが利太に失恋するところでは涙が出そうになりましたが……そのあとには超爆笑の演出が待ってるんですよね。ミラクル演出です! これからご覧になる方はぜひ、注目してみてください。
――あそこは最高でした! ネタバレになっちゃうのでくわしく言いたくなるのを抑えますが。映画にはコミックス10巻分のここぞという見せ場がしっかり入っていて、コンパクトにおさまってるのに驚きました。マンガの魅力を活かしつつ、映画独自の演出もハマっていて。
幸田 脚本をチェックさせていただいたとき、ホントにおもしろいし完璧にまとまってて何も言うことがありませんでしたね。直させてもらったことといえば……弘光のペットが猫という設定だったのを犬にしてもらったくらい。ホント、それだけです。そういえば、桐谷さんが「利太の泣き顔が好きだから、利太の泣き顔のシーンを入れてほしい」と言ってくださったそうで、これはうれしかったですね。
編集 利太は幼い頃、母親が男と駆け落ちしているんですが、映画版のラスト周辺に、原作にはない利太のお母さんのエピソードがあります。あれもストーリーのなかでとても利いていたと思います。
幸田 母と息子の久しぶりの再会といってもお涙ちょうだい的ではなく……濱田マリさんの演じるお母さんの温度が、自然で絶妙なんですよね。
編集 違和感なくすっと入ってくるシーンで。ストーリーのなかですごくいい効果を生んでいます。お母さんとの場面によって、利太の性格がわかりやすく伝わってくる。
――原作を読んでいる方も200%満足、まだ読んでない方ももちろん楽しめる映画だと思います。むしろ、映画を先に見て、初めて原作を読む人がまたうらやましいくらい。
幸田 映画を観て、自分でも新たな発見がありました。じつは私、マンガを描いているときには安達さんを好きになれなかったんですよ。でも、映画のなかの、我妻三輪子さんの演じる安達さんがとにかくいじらしくて……安達さんに泣かされるとは思ってませんでした。映画を観て、キャラのことがもっと好きになれました。
――幸田先生、ありがとうございました!
映画『ヒロイン失格』は9月19日(土)全国ロードショー!
みなさんぜひ足を運んでくださいね!
取材・構成:粟生こずえ
<次回予告>
次回、幸田先生には、『ヒロイン失格』のタイトル決定秘話、幸田先生のマンガ人生、現在連載中の『センセイ君主』について、おうかがいしています。10月5日(月)更新予定ですから、お楽しみに!
取材・構成:粟生こずえ