人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。
今回お話をうかがったのは、咲坂伊緒先生!
恋愛に夢見がちな由奈と、恋に積極的な朱里のWヒロインが贈る青春ストーリー『思い、思われ、ふり、ふられ』。
恋愛経験も価値観も異なる2人の女の子の、それぞれの恋のアプローチにハラハラドキドキする女子続出中の本作は、『このマンガがすごい!2017』オンナ編第9位にランクインした大人気少女マンガです。
今回は、著者の咲坂伊緒先生に、本作に登場する男女4人のフクザツな恋愛模様や、咲坂先生流のキャラクターづくりについておうかがいしました!
ちなみに、以前当サイトで行ったインタビューでは、『アオハライド』アニメ化&実写映画化への想いや、咲坂先生のルーツ、今後描いてみたいジャンルについてなどをおうかがいしています。こちらもあわせてお読みください!
一途もいいけどカジュアルに恋愛するのもいい
――『ストロボ・エッジ』『アオハライド』に続いて高校生の恋愛ドラマを描くにあたり、軸として意識したことはありますか?
咲坂 少女マンガの主人公の設定って、「ちょっと一途」が大前提みたいなほうに偏っている気がしていたんですよね。全然ぶれないでひとりの男の子を追いかけてる女の子の物語を読むのは、私自身大好きなんですが、現実の世界ではそういう子ばかりでもないんじゃないかなと思うんです。「一途」ばかりが美しいように描かれすぎちゃうと、そこからはずれてる自分は悪いのかと思いかねない。そうじゃないよ、カジュアルに恋するのもいいんだよ、という想いを託したのが朱里です。ただ、一途派を否定するつもりもないんです。なので、主人公を2人にしたらどうかなと。
――必然的にWヒロインになったわけですね。
咲坂 はい。どっちが偉いとか正しいということはなく、それぞれの価値観でいいじゃないということを描きたかったんです。
――王子様を待っているタイプの由奈が、それこそが純粋だと思ってしまうのもわかります。だけど違う価値観を持った朱里に触れて、人間的な幅が広がる……特に序盤はこうした成長物語の色が強いですね。
咲坂 そうなってるといいんですけど。10代にかぎらず、人って自分の価値観にそぐわないものをはじきたくなることがあるけど、それはもったいないと思う。自分が今持ってる価値観や常識だと信じてることは、ただのすりこみかもしれない。そのままでもいいけど、「もしかしたらもっとぴったりくる考え方もあるのかもしれない」と考えてほしくて。
――そこに、メインの男の子もあらかじめ2人配置したのは?
咲坂 男の子いっぱい描きたいからかな? ほんとはもっと描きたいけどいっぱい出しすぎるとてんやわんやになるので、最小人数にしました。でも、ひとりじゃダメなんですよ、三角関係になっちゃうから。恋に対して違う考え方を持っている朱里と由奈を対立させたら、この話を描く意味がないので。朱里と由奈それぞれに、それまで接していないタイプの男の子に出会わせたいという意図から、理央と和臣のキャラクターが生まれました。
――由奈と和臣は幼なじみ、朱里と理央は血のつながらない「きょうだい」という設定ですが、この意図は?
咲坂 人からいわれて気づいたんですけど、ひとつ屋根の下で血のつながらないきょうだいと、かたや幼なじみって少女マンガの王道全部盛りなんですよね。でも、そういう狙いはなかったんです。登場人物を学校以外のところで会わせるには、ひとつ屋根の下が便利。由奈と和臣が幼なじみである必要性もそこからで。「ひとつ屋根の下ならでは」「幼なじみならでは」がやりたかったわけではないんですよ。
――由奈と和臣には、少女マンガ的な幼なじみっぽさはないですよね。
咲坂 そうなんですよ。ホントにお互いなんとも思ってない。読者の方からいただくお手紙に「和臣は由奈が好きなんだったらいいな」と書いてあったりもするんですけど。それはないですね。
――ズバッと断言しましたね。
咲坂 私には大前提として「がんばらない子にはいい思いはさせたくない」っていう意識があって。当初の由奈って積極性もないしすぐあきらめちゃう子じゃないですか。そういう子を、ただ近くにいただけで和臣が自然に好きになるはずはないと。由奈ががんばり始めたのちに好きになる可能性はあるかもしれませんが。「がんばって外に向けて発信しないと見てもらえないよ」というメッセージも作品にこめているつもりです。
――由奈のほうとしても、確固とした王子様像を持っているので、和臣のことは恋の対象として見てないんでしょうね。由奈は意外とそのへんが図太い気もします(笑)。
咲坂 由奈はあれでかなりガンコです(笑)。