毎回、フクザツな事情を抱えた依頼人たちの”隠したい過去”や”過ち”を、あの手この手で「なかったコト」にしつつ、事件を解決する、千石探偵事務所の活躍を描いたドラマコミック「なかったコト探偵」をご存知だろうか?
主人公・こころと探偵たちの息のあったかけあいはもちろん、依頼人や証言者の会話に隠された巧妙なトリック&伏線が、本格ミステリーファンをもうならせると話題のドラマコミックだ。
ドラマコミック『なかったコト探偵』
プロローグ+エピソード01
120円(税込)
いつのまにか記憶喪失となってしまった主人公・こころは、千石探偵事務所の個性豊かな仲間とともに、とんでもない依頼内容を解決していく。
毎回、驚くべき手法で「なかったコト」にしようとしていく彼ら。しかし、依頼人をはじめ、関係者たちも一筋縄ではいかず……。
その関係者たちの証言のなかにある“矛盾”を探し出し、3人の証言者のなかで怪しい者を推理・選択し、探偵たちの行く手を阻む犯人をあぶりだすのが大まかなストーリーだ。
まさかの主人公も容疑者に!? 探偵力が試される名エピソード!!
千石探偵事務所でとんでもない依頼人ととんでもない事件にたちあいながらも、少しずつ成長していく主人公・こころ。
しかし、そんな彼女に最大の難関がおとずれてしまう!
それがエピソード06「血痕、なかったコトに」だ。
ある日、中学生くらいの男の子から「シャツについた”汚れ”を”なかったコト”にしてほしい」との依頼を受けたこころ。 何も考えずに引き受けてしまったが、千石探偵事務所の面々はその依頼をいぶかしむ。しかし一度受けた依頼はキャンセルしないのが、事務所のモットー。ひとまず、こころは血痕をしっかり洗い落としてしまう。
そして数日後、事務所に登場した東刑事のひと言で事態は一変する!
ある団地で起きた殺人事件の重要参考人が、こころに依頼してきた少年で、証拠とおぼしき「血痕のついたシャツ」をこころが証拠隠滅してしまったというのだ!
窮地に陥ったこころは「私の証拠隠滅の事実をなかったコトにしてください!」と依頼するのだが……。
こころのオッチョコチョイぶりを冒頭から堪能しながら、いざこの事件の真相と犯人の究明を読み解いていこうとするのだが、何せ今回は、新人・こころのミスで依頼人の少年の身元はまったくもってわからない! いつもとは違い、解決の糸口が数少ない状況に、読者もヤキモキされっぱなしだ。
そんな危機的状況のなかでも、なんとか少年の通う中学校をわりだし、学校へ向かうこころと雨宮探偵。
唯一こころが知っている依頼人の情報といえば、依頼人の顔。
こころは血まなこになって探しはじめるが……。
さて、物語を読み進めていくと、ある人物の登場によって祥一の家族にまつわる新事実が明らかになり、事件の全容が見えてくる。
しかし、この『なかったコト探偵』、ただのミステリー作品というだけじゃないところもミソだ。
今回、依頼内容や依頼人の詳細もわからないまま引き受けてしまったこころ。慎重さに欠ける行動でさらに墓穴を掘ってしまうオッチョコチョイなヤツだと思っていたけれど、彼女は彼女なりに、この依頼を受けた理由があったのだ。
リスクを承知のうえで「彼を助けなきゃ」と心に決めていた彼女が、やはり少しずつだが、探偵として成長をしていることを実感できるシーンなので、見逃さないでほしい。
複雑な事件と謎の裏に描かれる、濃密な人間ドラマ。まさにこれが『なかったコト探偵』の真骨頂だ。 再調査で関係者から様々な情報を聞きだしていく。だれから話を聞くかは読者がチョイスできるので、「この人は怪しい……」と思ったら、すぐさま聞き取りができ、主人公・こころとともに推理を進めていく臨場感が楽しい。
ひとつひとつの会話や手がかりをたどっていくと、疑わしき人物がしぼれてくる。ここで読者は再調査を経て、嘘の証言をしている人間を見つけなくてはならない。3人の疑わしき人物のなかでひとりだけ、真犯人を選び出すのだ。ただ読み解かせるだけでなく、結末を読者によって導くことができるという点は、本作の新感覚のおもしろさである!
そして答えを選んだその先に、きっと驚きの真相が待っているだろう。
本エピソードのラストはぜひあなたの手で解き明かしてほしい。
そしてこの「ダウトパート」で、本当の答えを選択できるかできないかで、結末が大きく異なる。そう、「なかったコト探偵」の醍醐味は、正解ではないほかの結末も体験できることにもあるのだ。
仮に正解とは異なる結末を選択したとしても、千石探偵事務所のペットである「にこまる」が正解に導いてくれる。
真犯人の正誤にかかわらず、ストーリーを純粋に楽しみたい方にとっても、パラレルワールドを味わえるのも楽しいのだ。
ちなみに、この事件をこころと一緒に捜査したハードボイルドな探偵・雨宮が、この事件を捜査することになるのにも、ある事情が……。そちらの衝撃の事実にもぜひ注目してほしい。
今すぐに「なかったコト探偵」を楽しみたい方は、コチラから!
<文・はろるどキサラギ>
フリー編集者。見習い感あふれる感じながら、ときに執筆やデザインを手がけることも。アニメとマンガが“ズッ友”。スポーツしてるDKが大好きだと叫びたい。