■4位 その愛は何よりも強く、何よりもえげつない
『異常者の愛』 千田大輔
『異常者の愛』 第1巻
千田大輔 講談社
小学生の頃、一之瀬一弥は同級生の三堂三姫に告白された。だが、当時幼なじみの二海二美香が好きだった一弥は三姫の告白を断ってしまう。その翌日、一弥が放課後の教室で見たのは、二美香を殺して返り血を浴びた三姫の姿だった。だが彼女はその現場を一弥に見られてもまったく動揺を見せずこういうのだ。
「これで私と付き合ってくれる?」
その事件から6年。すっかり人間関係に淡白になってしまった一弥だが、そんな彼を好きになってしまったのが高校の同級生の四谷四乃。四谷からの告白を最初は断る一弥だが、彼女の真摯な態度に心惹かれ、ついに2人は付きあうことに。
そして2人の初めてのデートの日、またしても三姫が一弥の前に姿を現す……!
かわいらしい絵柄とは裏腹に、三姫のサイコっぷりが超ヤバい。普通ストーカーっていったらもう少し段階を踏んでいくものなのに、最初に起こしたアクションが殺人なんだから完全にキまっちゃってる。さらに出所後も一弥がデートをすると知るや否や四乃を拉致監禁するという抜群の行動力を発揮。この人の姿をした悪魔の愛に一弥はどう立ち向かうのか?
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■5位 大切だった日常が血の渇望に塗りつぶされる
『ハピネス』 押見修造
『ハピネス』 第1巻
押見修造 講談社
同級生からパシリにされる冴えない高校生の岡崎誠。ある晩、深夜にレンタルDVDを返しにいった彼は謎の少女と遭遇し、血を吸われてしまう。それ以来、彼の身体に様々な変調が起こる。日の光が苦手になり、運動能力は向上し、そして何より他人の血の匂いに敏感になり、他人の血を欲するようになってしまう……。
この身体の変化をきっかけにして、岡崎は自分をいじめていた男子生徒と仲よくなったり、別のクラスの女子と話すようになったりと、学校生活が楽しくなってきて、まさに“青春”という感じ。だが、そんな時間も長くは続かず……。
吸血鬼を扱った作品はたくさんあるが、本作ではその王道ともいえる、人ならざる者の苦しみと悲しみを容赦なく描いていく。そして、この吸血鬼の設定と作者が得意とする思春期の特有のぐるぐるとした感情描写が絶妙にマッチしているのだ。
しかし、主人公の岡崎もかなり辛い目に合うが、彼の友人であり、同じく吸血鬼になってしまった勇樹を待ちうける運命はさらに悲惨……。現時点で作品の内容とはほど遠い、『ハピネス』というタイトルはどのように回収されていくのかにも、注目したい。
■6位 異能力者だらけの学園に転校してきた少女の正体は?
『無能なナナ』 るーすぼーい(作) 古屋庵(画)
『無能なナナ』 第1巻
るーすぼーい(作) 古屋庵(画) スクウェア・エニックス
絶海の孤島に建てられた、エリート学園。そこにいる生徒たちは手から炎を出したり、あるいは凍らせたりと、みな特別な能力を持っていた。そんな生徒たちを集めたこの学園の目的は“人類の敵”と呼ばれる存在と戦う戦士を養成することだった。
しかし、そこの生徒のひとりである中島ナナオは、その能力があまりに微妙だったため周囲から疎んじられていた。そんな状況で、学園にひとりの転校生がやってくる。彼女の名前は柊ナナ。人の心を読むことはできるが空気は読めない豪語する彼女との出会いをきっかけに、ナナオの運命は大きく変わっていく……!
なんだかありがちな“青春”話、だがこれがいい……! と思えるかもしれないが、ここから先はネタバレを防ぐために、公式ページのバックナンバーにある1話を最後まで読んでほしい。ちなみに公式ページの紹介文にも微妙にネタバレが含まれているので、なるべく紹介文を読まないよう注意するのをオススメします。
…………読んでいただけただろうか? というわけで、本作はそういう話なのである。
この第1話を読んで内容を気に入った人は是非続きを読んでほしい。次々と登場する特殊な能力者たちとナナが繰り広げる会話の応酬はきっとあなたの期待に応えること間違いない。