■7位 ゆるふわな殺し屋の日常とお仕事
『バイオレンスアクション』 浅井蓮次(画) 沢田新(作)
『バイオレンスアクション』 第1巻
浅井蓮次(画) 沢田新(作) 小学館
主人公のケイちゃんは20歳になる女の子で表向きは専門学校生(そう、“青春”=中高生ではないのだ!)。しかし、その裏ではデリバリーの殺し屋をやっている。そんなケイちゃんのすごいところは、いつでもどこでも決してぶれない“ゆるふわ”っぷり。死にかけのターゲットに証拠の写真を撮るからとカメラをかまえて明るく話しかけたり、ターゲットを殺す寸前で一方的に休憩を申し入れ、そのターゲットから勉強を教わったりと、その行動は天真爛漫にして天衣無縫。
しかし、一度やる気になれば、相手が集団であってもざっくばらんに始末していきます。銃やナイフを使った殺しのシーンは、スピード感のあるコマ割りや構図を用いて描かれ読んでいてじつに爽快。
血と硝煙のにおいがしみつくような日々を送っているケイちゃんですが、そんな彼女が生きる目標にしてるのは「日商簿記検定2級合格」。どこまで狙ってやって、どこまで天然なのかわからないところもありますが、試験がんばってほしいものです。
■8位 人を殺した時ってどんな気持ち?
『イノセントデビル』 仲村基(作) 宗一朗(画)
『イノセントデビル』 第1巻
仲村基(作) 宗一朗(画) スクウェア・エニックス
人を殺しても一切罪悪感を持たない特殊な人間「無邪気な悪魔(イノセントデビル)」。その無邪気な悪魔を研究する上条塔子とその助手である深海赤音のコンビが、様々な殺人鬼を追いかけるサイコサスペンス。成人しているのに外見が女子小学生にしか見えない塔子はなかなかのインパクトの持ち主で、さらに毎回登場する殺人鬼たちもなかなかに印象的なのですが、何より一番ヤバいのが、本作の主人公であり、無邪気な悪魔である赤音。
無邪気な悪魔ならではのえげつない手段で殺人犯を追いこんでいく姿も凄いが、真にすごいのは犯人を捕まえてからの言動。
かつて人を殺した経験があるのに、その時あまりに平常心だった彼女は、人を殺した時はどんな気持ちであるべきなのか理解できない。だから彼女は殺人犯を捕まえると、こう尋ねるのです。「人を殺した時ってどんな気持ち?」と。
そうやって殺人にまつわる事柄を目を輝かせてひたすら質問する姿は、まさに無邪気そのもの。こんな感じで赤音は、学校に行くわけでもなく、友達と遊びに行ったりせず、塔子とともに殺人犯を捜し、戦い、対話を繰り広げる日常を送るわけです。
そんな生活のどこが“青春”要素があるんだと思われるかもしれませんが、「少女が他人との交流を通して、自分が何者なのかを見つけ出そうとする」……これってすごく“青春”してるでしょう?
■9位 9人の殺人少女が織りなす刑務所内のサスペンス
『サタノファニ』 山田恵庸
『サタノファニ』 第1巻
山田恵庸 講談社
異常なまでの食いしん坊ながら、美しい外見と明るく元気な性格で学園一の人気者だった甘城千歌。だが、ある日彼女はバイト先の先輩に騙され、男たちに襲われてしまう。そんな絶体絶命の最中、千歌は普通の女の子が一瞬で殺人鬼に変わる“メデューサ症候群”を発症し、その場にいた5人を返りうちにして全員殺害してしまう。 彼女に下された判決は無期懲役。そして彼女は彼女と同様にメデューサ症候群にかかった女子が集められた羽黒刑務所へと送られる。
というわけで本作は特殊な刑務所に集められた9人の殺人女子たちの物語。女囚たちは、みな美人で、みなセクシー。性格も予想されたよりはフレンドリーで千歌にとってはありがたく、何かとサービスカットも多めで読者にとってもありがたい。そんなたいへん目に優しい作品になっているのだが、彼女たちの本性は殺人鬼。夜が来れば昼間とは違った顔を見せ始める。
そして夜ごとに起こる、実験と称した囚人たちの殺しあい。なぜ看守たちは彼女たちにこのようなことをさせるのか、この刑務所はなんのために建てられたのか、そもそもメデューサ症候群はどのようにして生まれたのか、様々な謎を孕みながら今日も羽黒刑務所の夜は更けていく……。
■10位 全員狩るまで終わらない! 地獄の復讐ここに開始!!
『復讐教室』 要龍(作)山崎烏(画)
『復讐教室』 第1巻
要龍(作)山崎烏(画) 双葉社
クラス中からいじめを受けていた藤沢彩菜。それまではギリギリの部分で耐えてきた、登校途中道路に突き飛ばされ、車に轢かれたことをきっかけには、ある決意を固める。
「お前たちに復讐する! 私と同じ地獄を味わわせてやるッ!」
そして始まる彩菜の復讐。最初は偽の手紙を使って浮気をばらしたり、泥棒の濡れ衣を着せたりと、まだ軽いものだったが、やがて彩菜の復讐がきっかけで、クラスメートのひとりが自殺し、ひとりは事故死してしまう。しかもその2人は元々は彩菜の親友だった……!
しかし、たとえ死者が出ようとも復讐は止まらない。さらに手段を選ばなくなった彩菜は気の弱いクラスメートを共犯に巻きこんでいき、どんどん復讐をエスカレートさせていく。しかし、クラスメートも一方的に狩られるばかりではない。なかには彩菜に対して牙をむく者もいる。復讐が復讐を呼ぶ煉獄のような教室で、最後に生き残るのははたしてだれなのか!?
<文/構成・犬紳士>
養蜂家。好きな野鳥はメジロ。