第4位(96ポイント)
『マイホームヒーロー』 山川直輝(作) 朝基まさし(画)
『マイホームヒーロー』
山川直輝(作) 朝基まさし(画) 講談社
玩具メーカーに勤め、妻と娘を愛する鳥栖哲雄。これまでは平凡ながらも幸せな人生を歩んでいた彼だが、娘の彼氏が平気で暴力を振るうチンピラであったこと、さらに人殺しの過去を持っていたことを知ってしまう。さらに偶然が重なったことで哲雄はその男を殺してしまい、その現場を妻に目撃されてしまう!
趣味で書いている推理小説の知識を活かして、なんとか完全犯罪を実現しようとする哲雄だが、カタギではない男の仲間の追跡は当然そこまで甘くなく……。
『100万の命の上に俺は立っている』の山川直輝と『サイコメトラー』の朝基まさしがタッグで贈る新作は、平凡な中年男性を主人公にしたクライム・サスペンス! エゲツない描写も多いが、ポップな絵柄と細やかなユーモアによって、物語は軽やかにそしても思いもよらない方面に進んでいく。次々に襲いくる脅威から哲雄は家族を守り抜くことができるのか?
オススメボイス!
■まず、タイトルがいいですね。「マイホーム」の「ヒーロー」。「ヒーロー」とは正体がバレてはいけないもの。娘のため、家族のために、普通の父が、そして母が「ヒーロー」になる。ただ、タイトルの響きとは異なる陰惨な描写の数々。小さな世界(家族)のゆくすえに固唾を飲みます(山本浩平/まんだらけうめだ店コミックスタッフ)
■愛する娘のために、ごく普通のお父さんが犯した殺人事件。平穏な家族の日常を守るために、推理小説の知識を武器にお父さんが完全犯罪に挑む姿を描きます。息の詰まるようなスリリングな展開と、とぼけた雰囲気のある夫婦のやりとりのギャップがおもしろい(芝原克也/日販ほんのひきだし編集部)
■「人を殺してしまったら、どうすればバレないようにできるか」に自分も興味があり、理屈っぽくてよかった。表情を動かさずに協力する奥さんにすごく好感を持った。殺人を犯しているのに応援してしまう、この不思議な気持ちは何?(紙屋高雪/ブログ「紙屋研究所」管理人)
第5位(88ポイント)
『セレベスト織田信長』 ジェントルメン中村
『セレベスト織田信長』
ジェントルメン中村 リイド社
「セレベスト」、それはセレブのはるか上をいく、贅沢を極めし者たちに与えられる称号。そして世はセレベストの頂点を目指す者たちの熱い戦いが描かれる! 戦いといってもセレベストたちは決して野蛮な手段に出ることはない。彼らの決闘の手段は「おもてなし」。贅を極めたおもてなしによって相手を感服させた方が勝ちなのだが、このおもてなしの内容がすごい!
熟女が数十年間口内で発酵させ続けた“口噛み酒withファーストキス”! 歴史上の英傑の髭を野口英世の肖像に植えこんだ札束風呂! ……といった具合に我々庶民の想像の限界のはるか上をいく、究極なおもてなしが次々に登場!
そんなものが、やたらと濃いタッチで描かれているのだから、読者へのインパクトはさらに大、そして読後に残る謎のほっこり感。一度読めば織田信長を初めとする強烈なセレベストたちが夢に出てくることは間違いなし。ほかではけっして味わえないオンリーワンの1冊だ。
オススメボイス!
■ホッコリの伝道師・ジェントルメン中村がスケール&グレードアップして帰ってきた! そして彼こそが、ワキに生えたキノコを描くのが宇宙一うまい男である。男たちの裸体、体毛、体液率の異常な高さ。常軌を逸したルビ使い。上のまた上(スカイズ・ザ・リミット)を目指す人間へ贈られた激読の書。合言葉はもちろん「だろォ~~!!」でキマリ!
■わかりやすいキャラクターと濃い絵柄、「セレベスト勝負」というコンセプトのわかりやすいバトル、そしてゲストのおもてなしからさらに上へいく織田信長のホッコリ感という、シンプルながら極上のテンプレで、毎回力技で強引に笑わせてくる。これは笑うしかない、だろォ?(いのけん/麻雀マンガブログ管理人)
第6位(78ポイント)
『3月のライオン』 羽海野チカ
『3月のライオン』
羽海野チカ 白泉社
アニメ化や実写映画化などメディアミックスも多数の人気将棋マンガ、『3月のライオン』の最新刊が一年ぶりに登場! 10代のプロ棋士・桐山零と彼の心の支えとなる川本家の三姉妹の物語なのだが、今回は桐山くんの出番はちょっと少なめで、サブキャラクターたちに焦点を当てた内容になっている。
なかでも大きくスポットが当たったのが桐山のライバルである二海堂だ。トーナメント戦で名人・宗谷とぶつかることになり、宗谷を倒した男にならんとこれまで以上の熱意を盤面にぶつける二海堂。はたしての彼の将棋、そしてその思いは名人に届くのか。
さらに川本家の長女・あかりをめぐり、林田先生と島田八段の恋のバトルが勃発!?
オススメボイス!
■あかりの恋バナが出てきて、ようやく幸せになってくれそうな予感(?)がしてうれしい。もう川本三姉妹は、親が子を見る目線で見守ってしまう。今回は二海堂が輝いてましたね。でも太く短い命の燃やし方に儚さも感じてしまう(かーずSP/個人ニュースサイト「かーずSP」管理人)
■恋愛に、盤上の勝負にと、激アツの展開。二階堂の活躍が最高! あかりさんの幸せを願いたいところです。……あれ、主人公の影が薄い??(和智永妙/ライターたまに編集)
第7位(64ポイント)
『異種族レビュアーズ』 天原(作) masha(画)
『異種族レビュアーズ』
天原(作) masha(画) KADOKAWA
ファンタジー作品などで、しばし語られる「人間にとっての美女は他の種族にとても美女なのか?」。そんな疑問に対して下ネタを交えつつ、意外な形で解答をしたのが本作『異種族レビュアーズ』だ。
内容はいたってシンプル。Hなお店に通うのが趣味の冒険者スタンクが、仲間といっしょに様々な種族の女性が風俗店へいき、その感想をクロスレビュー形式で書いていくというもの。500歳のエルフ(美女)と50歳の人間(おばちゃん)では50歳の人間のほうが人気だったり、手のひらサイズのフェアリーがお相手してくれるお店では、各人のサイズや太さによってNGがあったりと、風俗店とそのレビューをとおして様々な種族が暮らす文化や感性の違いなどを、おもしろおかしく表現してくれる。
少年誌で連載しているため直接的な描写はなく、絵柄もかわいらしいのでそこまで下品にはなっていないのだが、その一方で各人のレビューの文章がじつに生々しくて、そのギャップがまたおもしろい。
オススメボイス!
■風俗の話しかしていないのにファンタジーの世界観が構築されている。異世界とグルメみたいな話は親の顔より見てきたが、こういう切り口はほかにないのではないか。徹頭徹尾、下ネタなのに爽やかな読み味がある不思議な作品(raven/ディレッタント)
■アイデアに脱帽。多様化するファンタジーマンガのなかでもひときわ異彩を放つ愉快作。解剖学的見地にまで踏みこんだレビューに興味津々でした(杉山陽一/COMIC ZIN 新宿店 コミックバイヤー)