趣味人・両さんの大活躍は、最新ブームの活力を作品に取りこむことにつがった。
エアガンを搭載したドローン同士のバトルや、爆音上映会に4DXといった映画事情、コンパクトEV(電気自動車)に顔認証システムなど、最先端がよくわかる「ためになるこち亀」だ。
さらにドローンまわりの法整備がおぼつかず、日本が海外に遅れをとっている歯がゆさも指摘する反骨っぷりが両さんらしさ。
そして魅力あるキャラクターこそがマンガの命。
「こち亀」でも数えきれないほどのキャラが投入されたが、そのなかで定着したのはごくひと握りだ。おなじみになってる中川も、序盤で登場してからしばらく出番がなく、レギュラーに定着したのは後のこと。
雑学マニアで手先が器用な雑学(ざつ・まなぶ)や、屈強な身体と極端なネガティブ思考の根画手部といった個性的なキャラは、多くのキャラから選抜されて生き残ってきた精鋭だ。「こち亀」は読者の反応を見つつ、キャラを入れ替えることで、作品の鮮度を保ってきたのだ。
そんな「こち亀」世界も、今回でいったん幕引き。特別な重みを持つキャラについては、一応の決着が用意されている。通天閣署の名物婦警・御堂春はお気に入りの中川(飲酒)とともに大暴れし、中川の両親は10年ぶりに来日して息子と再会。
何より部長も最後の「両津のクソバカはどこに行った!」を決めてくれた。
両さんにとって大切な擬宝珠(ぎぼし)家とも、しばらくお別れだ。いつも厳しい夏春都(げばると。両さんの大叔母)は思い出の腕時計を直してもらってお礼をいい、両さんと一緒にひまわりの種を収穫する纏(まとい)と檸檬(レモン)は家族のようで、「両さんがもしも結婚していたら」の情景を思わせた。
同時に発売されたコミック版とジャンプ版の最終回は、それぞれ結末4ページがまるで違った別バージョンだ。ジャンプ版は「連載40周年グランドフィナーレ」と銘打って丸く収まっているが、単行本版はこれぞ「こち亀」!と膝を打つはっちゃけかた。
電子版ジャンプはバックナンバーも購入できるので、どちらも合わせて「永久保存」してはいかがだろう。
あ、両さんのいう「両方買ってもらういやらしい商法」の思惑どおりかも!
<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)、『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』、『超ファミコン』(ともに太田出版)など。