話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!
今回紹介するのは『動物たち』
『動物たち』著者のpanpanya先生から、コメントをいただきました!
『動物たち』
panpanya 白泉社 ¥960+税
(2016年11月30日発売)
『動物たち』はpanpanyaの通算4冊目の単行本である。
デビュー作『足摺り水族館』は『このマンガがすごい! 2014』オトコ編で14位にランクインし、本サイトで作者panpanyaに特別インタビューを行ったことも記憶にあたらしい。そして、前作『枕魚』からおよそ1年半ぶりにリリースされた本作は、「このマンガがすごい! WEB」2017年1月のオンナ編で第1位に輝いた。
『動物たち』は「楽園」(白泉社)本誌およびWEB増刊に掲載された13編や同人誌発表作から、猯(まみ)や狢(むじな)など動物が出てくる作品をより集めた、コンセプチュアルな短編集である。
「引っ越し」に関する5つの連作以外はすべて短編で、カラー原稿はそのまま収録。作品と作品のあいだに日記があったり、巻末に用語集があったりと、おなじみのpanpanyaワールドに潜りこむ仕掛けが、あちらこちらに用意されている。
さて、panpanya作品といえば、誌面全体のルックが特徴的である。
背景はビッシリと描きこまれている反面、キャラクターはシンプルな主線だけで描かれている。それが独特の世界観を醸し出すので、一目でpanpanya作品と認識できるはずだ。
作者panpanyaは、以前のインタビューで
“動いているものは、呼吸をして動いていますから、固定された背景などにくらべ、ゆらゆらしています。生きたキャラクターを描く際の必要な情報として、「怒ってる」とか「笑ってる」などが最低限認知できる程度の、いい加減な描き方が適切だと思いました”
と、その意図を語っている。
動物を大々的にフィーチャーした本作において、猯や狢を似たような簡素なフォルムで描いているのは、まさにそうした理由からだろう。
「狢」の冒頭、道路上で死体のように横たわっている静物の状態ではリアルに毛並みが描かれているのに、それが起き上がって動き出したとたんにシンプルな主線で描かれるようになるところに、作者の意図が如実に表れている。
その動物ならではの固有性を剥ぎ取られながら、しかしそれら「動く物」たちからは、じつにビビッドな躍動が感じられる。そこが本作の見どころのひとつだ。