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複雑化する現代。
この情報化社会では、日々さまざまなニュースが飛び交っています。だけど、ニュースを見聞きするだけでは、いまいちピンとこなかったりすることも……。
そんなときはマンガを読もう！ マンガを読めば、世相が見えてくる!? マンガから時代を読み解くカギを見つけ出そう！ それが本企画、週刊「このマンガ」B級ニュースです。
今回は、「ネットで話題沸騰！ “童貞を殺すセーター”とは？」について。
『童貞を殺すアンソロジーコミック』
アンソロジー 一迅社 ￥750+税
（2016年10月27日発売）
先週、SNS上では「童貞を殺すセーター」が注目を集めた。
ホルターネックでオープンバック……なんて説明をされても、なんのことやらサッパリだが、要するに金太郎サンの前掛けだ。前から見たら胸と局部は隠れてはいるものの、背中とか横乳とかツーケーとかはハイシドードー状態である。
一見すると清楚風、しかしそのじつはガチ・エロス。ギャップどころかツーバイフォーのエロ建築工法により、その姿を見るだけで童貞は瞬殺されてしまうらしい。
恐怖のセーターが降臨したッ!!
恐れよ、万国の童貞ッ！
童貞は……殺されるのだッ!!
「童貞を殺すセーター」を着た殺戮女（レディ）たちが、童貞の首を狩りに来るぞッ!!!
お前たちは……、殺されてしまうのだッッ!!!!
だがちょっと待ってほしい。
童貞とは、単に性交渉の経験のない男性のみを指すのだろうか？
そもそも世の男性の大半は、人格が形成される思春期を童貞のまま過ごしている。
つまり、いくら性交渉の経験だけ積んでも、メンタルが脱童貞できていなければ、いくつになっても童貞マインドを引きずったままなのだッ！ おレディ様たちのお情けをちょうだいしたくらいで、いっぱしの脱童貞気取りなんぞは片腹痛しッ！
恐れよ、万国のメンタル童貞ッ！
童貞もメンタル童貞も……殺されてしまうのだッ!!
お前ら殺されろッ!!
おりしも来週はバレンタイン。猛獣と化した殺戮女（レディ）たちが童貞たちをマン・ハントしまくって、まさしく日本は血のバレンタインになるッ！
ご愁傷様でしたッ!!!!
しかし、ただの童貞なんぞは見向きもされないッ！
「童貞を殺すセーター」を着た殺戮女（レディ）に殺されるだけの価値が、お前たちにあるというのかッ!?
否ッ!!
お前たちはまだまだ童貞力が欠如しているッ！
もっともっと童貞力を高め、「童貞を殺すセーター」を着た殺戮女（レディ）たちからロックオンされるぐらいのハイエンド童貞にアップデートする必要があるッ！
そこで今回は「童貞を殺すセーター」を着た殺戮女（レディ）にむごたらしく殺されるために、さらなる童貞力を磨くための童貞マンガを徹底紹介するッ！
「女子力アップ」なんてクソ食らえ、今回は「童貞力アップ」特集だッ!!
『逃げるは恥だが役に立つ』 第1巻
海野つなみ 講談社 ￥429+税
（2013年6月13日発売）
昨年末に日本中を席巻した童貞日本代表と言えば、『逃げるは恥だが役に立つ』（海野つなみ）の津崎平匡（ひらまさ）である。
平匡は京大出身のSEで、36歳の独身。高齢童貞にして「プロの独身」だ。
主人公の森山みくりが家事代行サービスとして平匡の家を訪れるようになり、やがて2人は、家事業務全般を制度的にも便宜上にも安定させる意図で「契約結婚」に踏みきる。
「雇用主」と「被雇用者」としてひとつ屋根の下で同居しているうちに、互いに惹かれあうようになっていくみくりと平匡。しかし平匡は、なかなか自分の気持ちに気づけない。
2016年にTBS系列で実写ドラマ化され、みくり役には新垣結衣が、平匡役には星野源がキャスティングされ、エンディングの「恋ダンス」とともに大ブレイク。日本中が平匡の童貞力の高さにやきもきさせられた。
ひとつ屋根の下にガッキーがいたら、そんなもんやるこたァやるに決まってるだろ、なんて思っているうちは童貞力は高められない。
童貞は恥ではないが、「童貞を殺すセーター」を着た女に殺されたければ「プロの独身」平匡の立ち居振る舞いに大いに学べッ！
『Gのサムライ』
田中圭一 リイド社 ￥780+税
（2016年4月15日発売）
童貞ならではの妄想力や性への執着を、これでもかと炸裂させたギャグマンガが田中圭一の『Gのサムライ』だ。
刑罰によって絶海の孤島に流された侍（童貞）と公家（童貞）が、脱童貞をめざして四苦八苦する。
作者の田中圭一といえば、手塚治虫タッチの絵柄や、本宮ひろ志タッチの絵柄でギャグ・パロディを描きまくってきたという輝かしい実績を持つ。
なにしろ流刑地は孤島ゆえに、女性と出会う機会は完全にノーチャンス。そのなかでせめて擬似的な体験でもできないものかと、あの手この手を駆使する。
ヤシの実の果肉にツッコんでみたり、エイの玉門をつけ狙ってみたり……。エロに対するその執着は、まさに童貞力の極みッ！ もうすでに枯れたジェントルメンも、きっと思春期の栗の花くさい思い出がよみがえるに違いない。
思い出せッ！ みんな最初は童貞だったッ!!
『文豪ストレイドッグス』 第1巻
朝霧カフカ（作） 春河35（画） KADOKAWA ￥560+税
（2013年4月3日発売）
さて、日本のレジェンド童貞と言えば、もちろん宮沢賢治である。
彼が田畑で足もとを見つめている写真は有名だろう。最近のファッション誌を開けば、みんなこの賢治ポーズだッ！
今や世の男性モデルも読モも、Instagramに自撮りをアップしているグッドルッキング・ガイも、みんなケンジ・インスパイアなのだッ！
なにしろケンジは裸足のまま外に駆けだしてお経を唱えるようなアッパー系だから、そこらのパリピに太刀打ちできるハズもない。
そんな俺たちのキング・ケンジをモデルにしたキャラクターが登場する作品が、『文豪ストレイドッグス』（原作：朝霧カフカ、作画：春河35）だ。
文豪をモデルにしたイケメンキャラクターが異能力を駆使して闘うアクション・マンガで、たとえば主人公の中島敦は「月下獣」という異能力で巨大な虎に変身して闘う。モデルはもちろん中島敦の『山月記』だ。元ネタやモデルの作家を知れば、より本作を楽しく読むことができるにちがいない。
本作に登場する宮沢賢治は、明るく天然な美少年。異能力「雨ニモマケズ」を発揮すると超怪力になり、身体も頑丈になる。主人公と同様に武装探偵者に所属し、なんだかんだで力業で事件を解決してしまうのだ。
本作の賢治なら狩りたいという女性は世間にはごまんといるはず。本作の賢治のような快活さは、童貞・非童貞を問わずに大事なモノなのである。
アメユジュトテチテケンジャ――ッッ!!!!
いかがだっただろうか、童貞の諸君ッ！
キミたちはこれから…………、殺されるのだッ！
高めるだけ童貞力を高めたら、「童貞を殺すセーター」を着た殺戮女（レディ）を震えて待てッ！
そして童貞として死んだお前たちは、何かに生まれ変わるのだッ！
何かにっ!?
何かにッ!!
＜文・加山竜司＞
『このマンガがすごい！』本誌や当サイトでの漫画家インタビュー（オトコ編）を担当しています。
Twitter：@1976Kayama
