『ポム・プリゾニエール La Pomme Prisonniere』
鶴田謙二 白泉社 \1,200+税
(2014年12月25日発売)
この心地よさは、いったい何なのだろう?
裸の女が廃墟で猫と戯れるだけの「日常」というにはあまりにシュールで、「物語」というにはあまりに何も起こらない、ただ無目的にとりとめなく綴られた散文詩のような世界。
なのに、眺めているだけで不思議な解放感にじわじわと満たされてゆく。
なんとも奇妙で素敵な作品なのだ。
独特の世界観と圧倒的な画力で知られる寡作のカリスマ、鶴田謙二の最新単行本。
『楽園 Le Paradis 』で発表された作品に描き下ろしを加えた全22編に加え、本人による作品解説、中村明日美子、沙村広明、木尾士目、石黒正数、寺田克也……といった面々によるカラーイラストとコメントが収録されている。
なんといっても、まず、ヒロインの脱ぎっぷりがすばらしい。
あけっぴろげなご開帳の表紙画に一瞬、レジに行くのを躊躇った人もいるだろうが、中身のほうもそれに負けず劣らず。
もはや衣服を身につけているシーンの方が不自然に見えてくる、一糸まとわぬ裸のオンパレードは、もはやエロをすっ飛ばして爽快ですらある。