『Derby Queen』第1巻
芦原妃名子 小学館 \390+税
1711年8月11日、イギリスのアスコット競馬場で初の競馬が行われた。
この競馬場は当時のアン女王が、彼女の居城であるウィンザー城の近くに広大な丘を見つけ、競走馬が全力で走るにふさわしいと建築を命じて建てられたとのこと。
現在も英国王室が所有する高貴な競馬場として有名で、ほぼ毎月に一度はレースが行われているという。
さて、競馬でもっとも著名なレースといえば「ダービー」だ。
イギリスのダービーステークス(エプソムダービー)にならい、各国でダービーと名のつくレースが行われている。
なかでもアメリカのケンタッキーダービー、日本の東京優駿は各国内最大級のレースで、初夏になると胸おどる競馬ファンも多いことだろう。
今日はそんな「ダービー」をタイトルに持つマンガをご紹介したい。
『Derby Queen』(ダービー・クイーン)の主人公は、大友緋芽(おおとも・ひめ)。
10年前の日本ダービーで落馬して命を落とした大友騎手の忘れ形見だ。
落馬事故のショックで、それ以来競馬とは無縁の生活を送ってきた緋芽だが、彼女の前にとある少年が現れる。
唯野良平(ただの・りょうへい)と名乗る彼が広げていたスポーツ紙には、荒川仁(あらかわ・じん)騎手が史上最年少のダービージョッキー(東京優駿を勝利した騎手)を目指すという活字が踊っていた。
その騎手と緋芽とは浅からぬ因縁があり、記事を見た彼女の心は大きく揺れる――。
馬を愛おしみ、ダービージョッキーになることが夢だった緋芽の父。
そんな父を失った傷は、競馬や競走馬に触れるたびに改めて痛み、現在活躍している騎手への複雑な思いも彼女を翻弄する。
しかしその辛さや悔しさをバネにして、騎手への道を進んでいく緋芽の強さ。
読んでいて励まされる、パワーのある一冊だ。
緋芽と同じ道を歩み始める良平と、騎手としての先達である仁との関わりも見逃せない。
この季節、夏競馬を楽しみつつ、競馬に人生を懸けるヒロインのドラマを堪能してみてはどうだろうか。
<文・山王さくらこ>
ゲームシナリオなど女性向けのライティングやってます。思考回路は基本的に乙女系&スピ系。
相方と情報発信ブログ始めました。主にクラシックやバレエ担当。
ブログ「この青はきみの青」