連載中の変化
――さて、再び『惡の華』のお話を伺いたいと思います。最初の構想では、どのあたりまでを考えていましたか?
押見 自分では記憶にないんですが、担当さんが言うには「3巻くらいで終わります」と僕が言ってたそうです。3巻の終わりで、ちょうど一区切りになっていますからね。3人で山に行って、山を越えられなくて、警察に補導されて帰ってくるところ。
――ちょうどアニメがそのくらいでした。
押見 そうですね、もうちょっと突っついて終わる感じでした。
――では最初の構想では、そこで終わる感じだったんですか?
押見 いや、そこまでガッチリ固めていたわけじゃないです。あんまり先を考えずに始めた感じですね。「こういう雰囲気の流れになったらいいな」とか漠然としたイメージはありましたけど、具体的にどう描くかは全然決めてませんでした。
――では3巻以降の展開は?
押見 先を見通していたわけではなくて、その時々で必然性があるものを追っかけていった……というか。まずネームを描きますよね。そこで担当さんから直しが入るわけですが、どういうところに直しが入るかというと、キャラクターの感情がつながっていない点です。必然性がないことを言ったり、やったりしていると、なんかガッカリした感じのつまらないマンガになっちゃうんです。そこの直しはいつもあって、その直しを追いかけていくような作り方でした。あまり遊びは入れず、余分なものは付け足さず、必要なものだけを描いた自覚はあります。
――必要なものだけでも、息苦しくなっちゃいますよね。それが作品の緊迫感を出しているのかもしれません。
押見 たしかに。だとしたら成功、なんですけどね。
――「必要なものだけを描いた」とおっしゃいましたが、物語が進むにつれ、モノローグがガンガン減っていきました。
押見 減りましたねぇ(笑)。そうですねぇ、なーんか、うん……。
――それは余分なものをそぎ落としていった結果?
押見 文法が変わっていった感じがします。
――“マンガの文法”、ですよね?
押見 そうです、そうです。最初は、それより前に描いていた作品の文法を引きづって描いている感じはありました。ギャグっぽいというか。
――いつもの押見作品だな、と。それがどんどん違う方向に進んでいった。絵柄も大きく変わりましたよね。
押見 ね、変わりましたね(笑)。
――連載中、押見先生の心境が大幅に変わったんじゃないか、と思うんですよ。
押見 半分は意識して変えたんですけど、もう半分は無意識ですねぇ。僕の場合、あまり客観的に自分の絵を見ることができないんです。そんなにコントロールできないんですよ。
――ではストーリー同様、こちらも「その時に合ったもの」を描いていったら結果的に変わった、と。
押見 最初はパソコンで描いてました。モニタで見ると、どうも横長になるというか、のっぺりした顔だな、って思うんですけど。それが段々とパソコンの扱いに慣れてきたのが4巻くらい。ちょっと絵が小綺麗になった自覚があります。でも6~7巻あたりで、パソコンが嫌になってアナログに切り替えたんです。
――中学生編の終盤、夏祭りの前後くらいですか?
押見 そのあたりです。高校生編になってからは完全にアナログにシフトしました。背景も最初は写真取り込みだったんですけど、手描きになりましたね。
――それはまたどうして?
押見 アナログで描きたい衝動が、ムクムクと湧き上がってきたんです。とくに言葉にできるような理由があったわけじゃないんですけど……。そのほうが合っているかな、と。最終回まで描いてみると、結果オーライだったと思います。
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取材・構成:加山竜司
撮影:辺見真也