自分を思いきりさらけ出したら、読者に共感してもらえた!
――こうしてお話ししていると、先生ご自身がはとりだったというのが納得です。いまこうしてお話させていただいていて、はとりが目の前にいるみたいに感じます。
幸田 でも、自分の経験をもとに描くって、自分の醜いところをいっぱい見ることになるので恥ずかしかったですね。こんなこともした、あんなこともしちゃったと思い返しながら、ほぼ実話で構成されている1巻の頃なんて、泣きながら描いてましたよ。
編集 けっこう踏みこんで描きましたよね。
幸田 でも、そんなダメな自分をさらけだしてみたら、読者さんから「私のことみたい」という感想をいっぱいもらったんです。共感してもらえるとわかったら、快感に変わって。よーし、どんどん出してこう、みたいに切り替わりました。
――本命がいるのにあっちにグラグラ、こっちにグラグラって、じつは多くの人が経験してることですよね。
幸田 好きじゃなくてもあんなイケメンに言い寄られたらグラつくでしょ。しかも、利太を待っていてもずっと片思いのままで、最終的にうまくいくかなんてわからない。
――少女マンガの王道ヒロインは「何があっても一途」なのかもしれませんが、現実的にはグラついて当たり前で。弘光は当初余裕しゃくしゃく、興味本位ではとりに近づいてる感じでしたが、途中から素直な面が見えてきて、キュンキュンさせられまくります!
幸田 弘光推しの人は、10巻で結局はとりが利太とくっついて、ガッカリしたでしょうね(笑)。でも、そこは私もいっしょで。何度、はとりを弘光とくっつけたいと思ったことか!
――特に弘光にはズバッと心に響く名ゼリフがたくさんありますが、そこも先生の経験から?
幸田 各キャラクターのセリフに関しては、自分だったらこういうときにどう思うだろうか、と自然に出てくる感情を描いています。
――弘光が、安達さんに「やな女だね」という場面はけっこう衝撃的でした。
幸田 これを描いているときの私は、完全にはとり目線ですね。まったく太刀打ちできない安達さんへのフラストレーションがあって、それを全部弘光に言ってもらったという。
――私としては、3人全部に共感しましたね。安達さんのちょっとズルいところも身に覚えがあってつらい。そんな安達さんを「やな女」「偽善者」と言ってくれる弘光は痛快! そして、安達さんがやりこめられて「ざまーみろ」と思うはとりの気持ちも全部わかる。少女マンガとしては踏みこんだシーンだと思います。
幸田 私は「弘光、行け~っ!!」て気分で描いていましたね。安達さんは、はとりにとって絶対に勝てない人で。でも、なぜ利太は安達さんを好きになったのかというのは、安達さんの魅力を理解しないと物語が描けないので、そこは掘り下げて考えました。それでも思い入れることまではできなかった安達さんのよさを、映画に教えてもらったのは、ホントにうれしく思っています。