いつかはシリアスなマンガを描いてやると思い続けて!?
――幸田先生は、どんなマンガを読んで育ったのでしょうか?
幸田 えーと、いっぱいありすぎて……。
――少年マンガも読んでいそうな気がしますが。
編集 『スラムダンク』(井上雄彦)ですかね?
幸田 大好きです! あと少年マンガなら『H2』(あだち充)かな。少女マンガで特に夢中になったのは『ベルサイユのばら』(池田理代子)、『姫ちゃんのリボン』(水沢めぐみ)。それからいくえみ綾さん、河原和音さん……。
――漫画家になろうと思ったのはいつごろですか?
幸田 けっこう遅いんですよね。高校1年生くらい。それまでは趣味でノートに描くくらいで、ペンを握ったこともなく。
――最初の投稿も「別冊マーガレット」ですか?
幸田 はい、「いくえみ先生の描いている雑誌に投稿したい」という単純な理由から。デビューは高校2年の夏です。デビューが決まった時は、クラスのみんながホームルームをつぶしてお祝いしてくれました。コンビニでペットボトルのジュース買ってきてくれて。
――キラキラな青春を送ってますね!
幸田 まわりがみんないい子たちばっかりで……。
――描き始めてからわりとすぐにデビューをしたわけですが、もともとお話を作るのが得意だったのでしょうか。
幸田 たまたま運よくデビューはできたんですが、むしろそこからがスタートでした。絵も話も課題だらけのド素人で。そこから担当さんたちや、アシスタント先の先生方に育てていただいたんです。
――幸田先生はおしゃべりがとてもおもしろいので……そういう資質がマンガに活きてるのかなと感じます。
編集 そうですよね。幸田さんとはよく打ち合わせの後に飲みにいったりしますけど、いつも腹筋が痛いです!
幸田 笑わせようと思ってるわけでもないんですけどね。
――デビュー当初からずっとコメディタッチの作風で?
幸田 いや、いくえみ先生に憧れてましたから、シリアスな話が描きたくて。新人作家さんにありがちかもしれないんですが、斜に構えた話を描いてて……。でも実際の人間はこんな感じなんで、当時の担当さんに「どう考えたってあなたはコメディでしょ」って言われて。でも、それを受けいれられないんですよ。「この人は私のうちに秘めたシリアスな要素を何もわかってない」とか思ってました(笑)。
しつこくシリアス路線を描いてはボツをくり返して、「うーん、コメディなのかな」と、ラブコメ描き始めたら通るようになったんですよ。
とはいえ、「じゃあ売れるまではコメディ描いてやるよ。売れたらシリアスに戻るからな」って思ってたのに……。いやあ、編集さんってすごいですね。コメディこそが、私のスタイルだったと早々に気づいていたわけですから。
――先生ご自身はいつ頃それに気づいたんですか?
幸田 『ヒロイン失格』を描く前くらいからうすうす気づいていましたけど、まだ「シリアスもいけるはず」って気持ちがどこかに残ってました。『ヒロイン失格』を始めた頃でさえ、ゆるふわのヒロインを描きたい気持ちがちょいちょい出てきて……。そうなると編集長に怒られましたね。「おまえにはおまえの味があるんだから、認めろ」って。
――『ヒロイン失格』を描いているうちにふっきれたのでしょうか?
幸田 はい……と言いたいところですが、私ってホントに往生際が悪いというか。気づいてる方もいると思いますが、いま「別冊マーガレット」で連載中の『センセイ君主』のはじめのほうって、変顔が少ないんですよ。 新連載を始めるに当たって今度こそ変顔を封印してかわい〜い少女マンガ描きたいという色気が出てしまって……(笑)。そしたら、アンケートの反応がいまいちなんですよ。はい、今度こそわかりました! 腹をくくって自分らしく描いているうちに人気が上がってきましたので、いまはどんどん描きます、変顔! 変顔は私にとって、勇者の聖剣エクスカリバーみたいなもので。自分の持っている一番強い武器を使わないでどうするってことですよね。
――無敵の武器ですよ! さて、連載中の『センセイ君主』で、ヒロイン・さまるんのお相手役に、弘光のお兄さんを登場させるというのは、いつ頃から決めていたんですか?
幸田 ……とにかく弘光と別れたくなかった(笑)。じつは『ヒロイン失格』で弘光にお兄さんがいるという設定はあったんですけど、結局出す機会がなくて。そしたら担当さんに「弘光のお兄さんが先生だったってことにすればいいじゃん」と言われて、「それだ!」と。3話くらいでさっそく弘光(弟)を登場させてます。