『パレス・メイヂ』を描くのに不可欠なのは、三島由紀夫のセレブ・エッセンス
——今、読み手として愛読しているのはどんなマンガですか?
久世 山岸凉子先生と萩尾望都先生のマンガが大好きです! 山岸先生は、中学生くらいのとき『日出処の天子』を読んで、すごく衝撃を受けて以来の大ファンです。
——それまで読んできたマンガとはまた違う衝撃があったのでしょうか。
久世 怖さ、不気味さと、軽さが同居している不思議な感覚にひかれますね。また、美しくて凄みがある。そういう雰囲気が総じて好きです。シリアスな話なのにツッコミが入ってたり、古代の物語でも横文字の言葉を使うような軽さが好きですね。
——萩尾望都先生は?
久世 恥ずかしながら萩尾作品を読み出したのがとても遅くて……。お世話になった編集さんがすごく萩尾望都を好きだったので、読んでみようと。最初に読んだのが『ポーの一族』で、すぐ夢中になりました。「萩尾先生は、なんでこんなに外国っぽい雰囲気を描くのがうまいんだろう」と考えて……絵だけじゃなく、モノローグやセリフ自体も翻訳文学っぽいんじゃないかと思ったんです。
——それはすごく納得です。
久世 絵と言葉の相乗効果かな、と。絵も、文章もキラキラしてるんですよね。
——小説ではいかがですか?
久世 三島由紀夫です! 『パレス・メイヂ』のネームをやる前は、必ず三島由紀夫を読んでからやります。『春の雪』『夜会服』の2作品はどちらもセレブリティを描いた物語なので……エンジンかけるために必要なんですよ。これを読んで、きらびやかさを浴びてから描く(笑)。
——そうなんですか。三島由紀夫ってそんなにセレブを書くのがうまいとは知らなかったです。
久世 本人はセレブじゃないですけど、なぜかうまいんですよ! 太宰治が『斜陽』で没落貴族を書いたとき、三島は「こんなの貴族じゃない」って言ったとか言わないとか。三島っていうと一般的には「右翼・切腹・葉隠」のイメージが強いと思いますが、いやいや内面は乙女チックなんですよ。ガチムチの乙女チックなんです(笑)。
——ガチムチの乙女チック……キラーフレーズがどんどん出てきますねぇ(笑)。