■4位 被害者と加害者が逆転した末、訪れる結末は……。
『監獄実験―プリズンラボ―』 水瀬チホ(画) 貫徹(作)
『監獄実験―プリズンラボ―』 第1巻
水瀬チホ(画) 貫徹(作) 双葉社
いじめに苦しむ高校生・江山藍都のもとに届いたある一通の手紙、それは「監禁ゲーム」への招待状だった。ゲームの内容は、特定の相手を1カ月間監禁し、監禁相手に対しては殺す以外の何をしても許される。さらに相手に自分の名前を最後までバレなければ賞金1000万円も手に入るというものだった。これを知った江山は、監禁相手に自分を長年いじめ続けた女子・桐島彩を指名し、これまでの復讐を決意する……!
とはいえこれまで一方的にいじめられていた人間が、突然復讐の鬼になれるはずもなく、最初は暴力の行使を躊躇いがちに。だが、ほかの参加者の過激な行動や、桐島からの思わぬ反撃の影響で、江山を縛っていた常識や道徳は徐々に崩れ始める。単純な暴力の連続から、家族を利用した脅迫まで絡めて、あらゆる手段で桐島の精神を砕きにかかる江山。そこには理不尽ないじめに苦しんでいた頃の面影はどこにも残っておらず……。
また、ただ単純な復讐劇で終わるのではなく、ゲームを有利に進めるためのほかの参加者との駆け引きや、ゲームの運営側の人物たちの陰謀、さらに参加者たちの意外なつながりなど、複数の人物の思惑が何重にも重なりあい、物語は思わぬ方向へ突き進む。怒りや憎しみをひたすら煽り立てるこのゲームに隠された真相とは……?
■5位 決して逃げることはできない母の愛
『血の轍』 押見修造
『血の轍』 第1巻
押見修造 小学館
本作の主人公・長部静一は、失敗したら死ぬゲームに参加するわけでも、閉鎖的な環境に閉じこめられて殺しあいをさせられるわけでもない。ごく普通の学校生活を送る一般的な中学生である。変わったことといえば、お母さんの静子さんがちょっと過保護ぎみなだけで……。
明らかにこれまで紹介してきた作品とは毛色が違う本作。だが、ある意味でもっとも怖い作品ともいえるのだ。最初はちょっと子離れができない母親に思えた静子が、話が進むにつれて、「あれ、ちょっとこの人おかしくない?」という感じになっていき、徐々に静一への異常な愛情を明らかにしていく。ほとんどトーンを使わない迫力のある画風に加えて、細かな表情の変化からうかがえる心理描写は、粘りつくような恐怖を読者にも与えてくる。
ほかのマンガだとなんとかして異常な環境から抜け出して、家に戻りたいと思ってがんばるものなのだが、静一にとってはある意味自宅こそが地獄。逃げ出す場所などどこにもなく、モラルは文句なしに崩壊している。そんななか、同級生の女子が静一にラブレターを渡してきたりするものだから、もうこの先嫌な予感しかしないよ……。
■6位 猿! 大自然! 人間! あらゆる脅威が牙をむく!
『モンキーピーク』 志名坂高次 (作)粂田晃宏 (画)
『モンキーピーク』 第1巻
志名坂高次(作)粂田晃宏 (画) 日本文芸社
薬害事件を起こしたためトップが辞任し、新社長のもと、登山レクリエーションを行うことになった藤谷製薬の社員たち。だが、山を登った彼らを待っていたのは、謎の巨大な猿だった……!
武器を持って容赦なく社員たちを殺していく鬼猿。どうにか猿のもとから逃げだした社員たちだが、助けを呼びにいこうにも猿に追いつめられたためにそう簡単に下山はできない。さらに食糧難や内通者の疑いなど様々な問題も浮上し、仲間内でも対立が深まっていく……。
武装した巨大な猿、高く険しい山々、疑心暗鬼に陥った人間、どれかひとつの要素だけでも充分危険なのに、この3つが同時に重なりあうという、盆と正月とクリスマスがいっぺんに来たような地獄絵図!
なぜ猿は社員たちを狙うのか、そもそも本当に猿なのか、そんな疑問も生ずれど、この極限的状況で何より優先すべきは生き残ること。あらゆる方向から来る圧倒的な殺意を、社員たちははねのけることができるのか!?