一方、連綿と続く悪縁をひもとくうえでの重要なカギを握るのが、白紙を見つめるだけでさまざまなことを示唆する絵が浮かびあがるという「天狗の秘図面」。お輪の4代前の先祖である正右衛門が、愛宕山で遭難しかけた際に現れた謎の行者にもらったアイテムだ。
天狗の秘図面のおかげで京に戻ることができた正右衛門にとっては、その後の運が開けた宝物ではあるのだが、後日、大きな代償を払わされることになる。その代償こそが80年以上続く呪縛の始まりだった――。お輪が謎の深部に近づくとき、物語は大きく動き始める。
しなやかなタッチで描かれる君塚キャラクターにも注目。悪縁を断ち切るために奔走するお輪は、キュートさと芯の強さをあわせ持った表情が印象的。謎多き行者の帰燕は背の高いクールなイケメンで、すごみのある目力にゾクゾク。なんとしてでもお輪と結婚したい徳次は、愛嬌抜群で読者に一番近い存在かもしれない。
お輪が繰り返し見る京の大火と亡くした男児の夢、突如現れた帰燕の素性と真の目的、天狗の秘図面とその代償……。パズルのピースは揃い始めたが、お輪は呪縛から逃れるための術にはたどりついていない。張り巡らされた伏線はまだまだ回収されておらず、クライマックスに向けたこの先の展開は激熱必至。
時代劇でありながらミステリー、SF、ファンタジー、ホラー、ラブロマンス全部乗せの贅沢な逸品を、ページの隅々までしゃぶるように読んでくださいませ!
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<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。