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田島列島『子供はわかってあげない』インタビュー【前編】 新感覚ボーイミーツガール!甘酸っぱすぎるひと夏の大冒険!!

2015/01/12


とんとん拍子で決まった連載と絵に悩み、煮詰まったスランプ期

――こうして「田島列島縦断ツアー」の短編3本の掲載を経て、ついに『子供はわかってあげない』の連載がスタートするわけですね。

担当 そうです。その前に2013年の12月にアプリ「週刊Dモーニング」[注5]の「新人増刊号」に受賞作『ごあいさつ』を載せました。田島先生の読み切り作品を支持してくれる方はけっこういらっしゃったので。それがまた人気があったので、「田島列島縦断ツアー」と『子供はわかってあげない』の連載開始は当初の予定より早くスタートすることになりました。

――最初の掲載作『おっぱいありがとう』は衝撃的でした。なんでこんなこと思いつくんだろう、と。田島先生は、特に奇抜なことを描こうと思っているわけではないんですよね?

田島 そうですね。思いつけば、それをそのまま描いています。

担当 この「田島列島縦断ツアー」ですごく反響があったので、『子供はわかってあげない』の連載もいけるんじゃないかと手応えは感じていました。

田島 でも最初は「人気がなかったら途中で終わるかも」と言われてました。

――では意地悪な聞きかたをしますが、ネームが20話分あるからといって、それが20話掲載の保証になっていたわけではないんですね?

担当 ずっと人気なかったら、 やっぱり載せられなくなります。それはまぁ、雑誌の宿命ですからね。

――実際に連載が始まって、読者の反応はどうでした?

担当 「モーニング」の読者層は社会人が多いので、高校生の恋愛話に興味を持ってもらえるか、内心かなりドキドキでした。だから柱のアオリに凝ってみるとか、できるだけ楽しそうな雰囲気作りをしたんですよね。とにかく読んでさえもらえれば、この作品は絶対に大丈夫だと思っていましたから。いざフタを開けてみたら、1話目の反応がかなりよかったんですよ。

サクタさんと門司くんが屋上で運命的な出会いを果たした第1話。このやりとりのおもしろさは大人の読者だからこそわかる!

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田島 1話目なんて、まだ何も起きてないのに。

担当 キャラクター紹介のような話ですね。この2人で何かが始まるよ、というような。

――連載中、いちばんキツかったのはどれくらいの時期ですか?

田島 第12話です。

田島先生が苦しんだという第12話。おもしろさが加速してきたノリノリの回だと思いきや、そんな苦労があったとは。

田島先生が苦しんだという第12話。おもしろさが加速してきたノリノリの回だと思いきや、そんな苦労があったとは。

――即答ですね。ネームがしんどかった?

田島 いや、原稿です。「あとがき」に描いた、絵に苦しんだ時期です。うーん、なんて言えばいいんだろう……。描いた絵が気に入らなくて、「へたくそーっ!」って自分で思ってました。

――ずいぶん煮詰まってたんですね。

担当 実際に上がってくる原稿を見ると、どんどん線もよくなってくるし、キャラクターの表情もよくなってくるのに、田島先生は「ヘタになってませんか?」とおっしゃるんですよ。

――当人にしかわからない、何かがあるのでしょうか?

田島 何か気に入らないんですよ。

担当 連載開始時には7話分の原稿ができあがっていたんですけど、それまで1話に10日くらいかかっていたのが、2週間かかるようになった。週刊連載ですから、1話で1週追いつかれてくるので、相当ドキドキしてましたよ(笑)

――バッファがどんどんなくなっていったわけですね。素人考えだと、慣れたら速くなりそうですが?

田島 最初の2〜3ページを乗り越えると、そこからは速く描けるんです。でも、その最初の数ページにかかる時間がどんどん増えちゃって……。エンジンが温まらない、みたいな感じでした。

担当 普通、漫画家さんはネーム→下絵→原稿、次回の打ち合わせをやって、再びネーム→下絵→原稿……のサイクルで連載をします。ネームと原稿で使う頭が違うので、息抜きにもなるんじゃないかと思うんですね。でも田島先生の場合、もうOKの出たネームが20話分あったので、ひたすら下絵→原稿→下絵→原稿の繰り返しでした。

―アシスタントさんは入れていたんですか?

田島 いえ、ひとりで描いてました。

担当 絵柄的に、アシスタントを入れづらいという面はありますからね。家にアシスタントさんやご家族がいれば、また気分転換もできるんでしょうけど。

――山ごもりみたいな生活ですね。

田島 本当そうでした(笑)

――気分転換に出かけたりしなかったんですか?

田島 遠出なんてできなかったです。あ、気分転換にマンガは読みました。

――何を読まれました?

田島 『聲の形』[注6]とか。女の子をかわいく描こうと思って、かわいい女の子が出てくるマンガがいいなぁ、って思って。あと『ニセコイ』【注7】[注7]も読みました。

気分転換に読んだという『聲の形』。硝子ちゃん、かわいい。こちらも「このマンガがすごい!2015」本誌のオトコ編第1位の話題作。

気分転換に読んだという『聲の形』。硝子ちゃん、かわいい。こちらも「このマンガがすごい!2015」本誌のオトコ編第1位の話題作。

――それは気分転換というより、参考資料じゃないですか。

田島 あ、いや、ちゃんと楽しんで読んでいましたよ(笑)

担当 でも苦しんで苦しんだおかげなのか、ラスト2話はそれまでで最速の9日間で仕上げましたよ。

――ペースがつかめました?

田島 そう……かな。もう忘れちゃいました。

担当 ええ!?

田島 (笑)

担当 まあ、またやればすぐ思い出すんでしょうけど……。とにかく連載中は会うたびに顔色が悪くなっていったので、本当にお疲れさまでした。


  • 注5 週刊Dモーニング 講談社が運営する週刊電子コミック誌。有料会員(月額500円)になれば、「モーニング」本誌掲載の全作品が毎週読める(バックナンバー含む)。12月に本誌が合併号になって出版されない時に「新人増刊号」がリリースされる。2013年の「新人増刊号」に田島列島先生の『ごあいさつ』が掲載され、この時にアンケート1位となった小出もと貴『アイリウム』は「モーニング」本誌でも連載し、コミックスが発売された。 ※【日刊マンガガイド】『アイリウム』https://konomanga.jp/guide/17471-2
  • 注6 『聲の形』 大今良時先生の作品。「このマンガがすごい!2015」本誌のオトコ編で第1位に輝いた。耳の聞こえない少女と、かつて彼女をいじめていた少年による感動作。 ※【スペシャルインタビュー】https://konomanga.jp/interview/17665-2
  • 注7 『ニセコイ』 「週刊少年ジャンプ」に連載中の古味直志による学園ラブコメマンガ。王道展開が受け、2014年1月から5月までテレビアニメも放送された。

取材・構成:加山竜司

■次回予告 ゆるふわタッチとセンス抜群のセリフが心地よい世界を作り出す田島マンガ。田島列島流のマンガ術を大公開!


【後編はこちら!】
田島列島『子供はわかってあげない』インタビュー【後編】 キャラクターと一緒にマンガを作っていく

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