3度のメシより“2番手男子”!
門倉 あと推しておきたいのは、40年ぶりの新刊第2弾が出た『ベルサイユのばら』。あまりにも王道ですけど、意外と新作が出てるのを知らない人もいるので。ちなみにこの12巻では、私が一番好きだった、フェルゼンとオスカルが一度だけ舞踏会で踊る、あの胸きゅん場面が、本編と違う視点で書かれているんです。これでときめかないわけがない!
福田 逆にアンドレって絶対にあきらめないし、重いじゃない? 夜はショコラを運んでくるし、目が見えないのに戦場来るし(笑)。でも“きもい男子推し”の女子は確実にいるよね。
門倉 重い! しかも彼は主人を無理やり押し倒すっていう、やっちゃいけないことやってますからね……。
福田 粘着キャラへの支持ってじつはあつい。『ハチミツとクローバー』の真山は、もはや伝説のきもい系です! いわゆる2番手男子のきもさと紙一重のひたむきさが快感というか。『3月のライオン』のヒロイン・ひなちゃんの初恋は野球少年だったので、主人公の零くんは2番手ポジションですが、10、11巻とかなりキてますね
門倉 『ちはやふる』(2015年10月の「このマンガがすごい!」ランキングオンナ編7位)の太一もそうですよね。
福田 『ちはやふる』も、決を取ったら二分くらいに割れるかも。太一の追い上げがすごい。いいじゃない!絶対そっちのほうが幸せになれるよ!っていうレベルでかっこいい。
門倉 ほんとそう。『宇宙を駆けるよだか』(2015年4月の「このマンガがすごい!」ランキングオンナ編7位)も2番手男子がいいマンガですよね。“わたしをわかってくれる”2番手男子。
福田 2番手男子がかっこいいと、ゴージャスな感じがするよね。2番手男子がより際立った存在だと、ハーゲンダッツ級のリッチフレーバーみたいな高級感が出る。登場回数が少なかったり、本命の対抗馬としては弱い「かませ犬」みたいな相手だとラクトアイス、って感じだけど(笑)。最近はイケメン率が上がって、2番手とどっちにしようか選べない作品が増えてる気がする。たとえば往年の名作『イタズラなKiss』の入江君に対する金ちゃんは比べようがないくらいギャグ要員だった。金ちゃんは金ちゃんですごい魅力があるし、幸せになるけどね。
門倉 やっぱりいろんなタイプのイケメンが出てきて、「私はこっち派!」とか議論できて盛り上がるのがいい胸きゅんマンガですよね。
福田 『私がモテてどうすんだ』も、イケメンのバリエーションが豊富なマンガ。ぢゅん子さんはもともとBLですごく人気のある作家さんなんですよ。いろんな属性の男子を描き分けられるっていう、BLで培った能力を最大限に発揮して、少女マンガでもちゃんとブレイクしてる。
門倉 「自分はこういう人にきゅんとくる」っていうのをちゃんと知っておくといいですよね。そういうのって、みんなあるはずだから。こういう人がきゅんとくるっていうのが。
福田 それで言うと、私は『七つ屋志のぶの宝石匣』(2015年1月の「このマンガがすごい!」ランキングオンナ編3位)。あいかわらず、千秋様ラインのイケメンが好きだから。好物は何作読んでもおいしい(笑)。「これだよこれ!!」っていう。宝石とか質屋さんとか、知らない世界につれていってくれるのもいい。
門倉 私はおじさん好きなので、『月影ベイベ』の円さんとか最高ですね。女子高生にはまったく振り向かない感じもいい! 同じ「月刊フラワーズ」連載の『カツカレーの日』(2015年9月の「このマンガがすごい!」ランキングオンナ編2位)もいい中年おじさんが出てきますよね。
福田 『娚の一生』の海江田教授ともまた違うタイプだよね。ちょっと神経質でインテリで…そんなの女子は好きに決まってるし! っていう海江田タイプから、角刈りの肉体派のおじさんまで、いろんなかっこいいおじさんが描けるのはすごい。
門倉 ちょっと違う視点からの胸きゅんですが、「なかよし」の60周年記念で復刻した『地獄でメスがひかる』、装丁を見ただけでわー!! って盛り上がりましたもん。ほかにも『おはよう!スパンク』とか『なな色マジック』とか、懐かしい作品がいっぱい復刻してるんですよね。
福田 復刻といえば、岡田あーみん先生の『ルナティック雑技団』(2015年9月の「このマンガがすごい!」ランキングオンナ編7位)も外せないしね。今、30~40代でサブカル寄りの人は、みんなあーみん先生が大好きだし。
門倉 あと、復刻以外も含めて絶対に外せない! っていう作品ありますか?
福田 胸きゅんとはちょっと違うかもしれないけど、乙一さんが原作の『山羊座の友人』。未来の新聞記事がベランダに飛んできて、そこに書かれていた事件を阻止しようとがんばるんだけど……という話。胸がぎゅっと絞られるような、せつない傷みがあるんです。門倉さんはほかにある?
門倉 これも少女マンガじゃないけど、読んでいてまさに「心が洗われた」って思ったのが『乱と灰色の世界』(2015年8月の「このマンガがすごい!」ランキングオトコ編10位)。読んだ後は私の中に通り雨が降っていったような感覚があって、その余韻がしばらく消えませんでした。いいときめきマンガって、心だけじゃなく体も浄化されていくような気がしますよね。
福田 昔の話ですが、私は『スラムダンク』を3回くらい通して読んだら3㎏やせたことあるよ(笑)。いい男しか出てこないから、ドキドキして食欲が落ちて。
門倉 食べてる場合じゃない!っていう(笑)。体温上がる感じがしますもんね。マンガを読んでドキドキすると。
福田 ホント、ときめきは心だけじゃなくて身体にもいい。年齢に関係なく必要だと思いますよ。
現在発売中の大人の女性向けのファッション誌「リンネル」11月号では、“胸きゅんマンガ”をテーマにした、福田里香さん&門倉紫麻さん、「このマンガがすごい!」編集長の座談会が掲載されています。こちらも要チェック!